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3] 暫定措置事業の評価

暫定措置事業において、解撤量が建造量よりも大幅に多いことは、同事業の二次的効果として過剰船腹を減少させ船腹需給を改善するはずである。貨物船においては解撤効果が徐々にあらわれ、直近の状況では用船料の下げ止まり効果が見られる。他方、油送船においては、内航への需要量が減少しているため減船効果は相殺されていると考えられる。船腹需要の減退とそれに伴う運賃、用船料市況の低迷は建造量減少につながっており、これによるマイナスの影響も無視できないと思われる。そのひとつは、交付金交付額に比べて建造納付金が少ないため、暫定措置事業の事業資金不足が懸念される点である。二つ目は、建造量の低迷が内航船舶を建造している造船所に及ぼす影響である。建造需要の減少により、造船所の倒産や造船業からの撤退が生じると造船能力が減少し、将来の建造意欲増加時の対応が懸念される点である。

内航海運業界は、船腹調整事業の解消と暫定措置事業の受入れを認めたが、個々の事業者においてはかなりの不満もあった。今回実施した事業者アンケートにおいても、暫定措置事業の内容に不満がある事業者が多く、貸渡専業者の77%、運送専業者の73%を占めている(図3-4.)。

 

図3-4. 内航海運暫定措置事業の評価(アンケート結果)

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貸渡業の一杯船主では不満度は82%とさらに高くなっている。さらに、貸渡専業者のうち経常収支が赤字の事業者では不満度は93%に達しており、零細で経営内容のよくない事業者での不満度が高い(表3-4.)。

 

表3-4. 貸渡専業者における暫定措置事業の評価(アンケート結果)

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