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2] 業績のよい事業者の事例(ヒアリング結果)

 

<事業者の特性>

・所在地…大阪市

・所有船舶…4隻

・事業形態…株式会社

 

ア. 最近の景況について

全体的に貨物が減少しており、事業者間で荷の取り合いとなっている。生産ロットが小口化し、内航よりもトラック輸送に適合するため、トラックへ貨物が流れている。しかも、荷主は物流合理化の名目で運賃値下げを要求する。事業者がこの要求を受け入れるので値崩れが激しい(一杯船主などは従来の半額でも受注する)。

 

イ. 暫定措置事業について

これまで申請したのは、優良事業者が多い(債務の残っていない船が主)。2隻以上所有していて、そのうちの1隻を解撤するといった事業者が多く、一杯船主は少ないのではないか。したがって、暫定措置事業の導入によっても貸渡事業者の数はそれほど減らないと思われる。解撤されずに残るのは、問題の多い(債務が残っている)船ばかりになり、かえって問題は深刻になる。

2隻以上所有している船主は、借金が残っていても減船できるが、一杯船主では「解撤イコール廃業」であるため、借金を残したままでの解撤はできない。

 

ウ. 集約化・協業化について

当社もかつては一杯船主であった。その頃(30年以上前)、保険の対象にならない木船を所有する事業者で組合を作り、交渉力強化を狙ったが、結局できなかった。一杯船主の協業や集約はむずかしい。1人1人の考え方が異なるし、プライドもあるようだ。

 

エ. 内航業界の将来について

将来は大手事業者中心になるだろう。しかし、家族船員で運航する一杯船主は残るだろう。大手以外の事業者は将来の展望もなく「何とかなるだろう」という気持ちではないか(実際は何ともならない)。内航活性化については正直言って「打つ手なし」という感じである。不良債権の一括処理や業界全体のリストラ、あるいは中国、台湾などの近海航路に内航事業者が運航できるようにするなど、多方面の抜本的な改善を導入しないかぎり内航活性化は難しい。

用船料は下がるのに、公団借入金の金利(7.5%)は固定されたままなので、経営は非常に苦しい。せめて金利だけでも下げてほしい。

 

 

 

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