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端的に言えば、真剣で、全力で、魅力のあるプレー、息詰まるゲームの展開を見せることであろう。抽象的に言えば、こういうことかもしれないが、プレーヤー、監督、球団オーナーの立場としては、ますます観客動員数が減少し、収入も意欲も減退している中で、「何をどう頑張れというのか・・・」ということかもしれない。

そこで、ルールの改正である。ピッチャーはどんな速い球を投げてもいいし、バッターはどれだけ遠くボールを飛ばしてもいい、ランナーは盗塁してもいい、審判はジャッジに専念し、監督は自己の責任の下、自由に采配する。

それで、何を期待するか。プレーヤーは、自分の能力の最大限でプレーできるようになる。肩の強いピッチャーはその速球を最大限活かし、バッターはいかにヒットを打つかを研究し、ランナーは常に次の塁をうかがう。ただし、このように規制がなくなったからといっても、選手が常に体を酷使して、速い球を投げ、遠くにボールを飛ばすことだけが「勝ち」につながるとは限らない。ピッチャーは変化球を磨き、コーナーをつき、攻撃面でも、送りバント、スクイズ、ヒット・エンド・ラン等多彩な戦略が生まれ、さらに、様々な駆け引きが生まれるかも知れない。それが、「創意工夫」ではないか。それで、プレーヤーにも、試合展開にも活気が生まれ、全体として観客が増えれば言うことはない。

かなり乱暴な例えではあるが、「内航海運業」にもきれのある「変化球」を投げるピッチャーや「スクイズ・バント」などの多彩な戦略が生まれないだろうか。

 

3. 内航海運業の将来像

本調査研究を始めるに当たって、当初、経営基盤強化策の「切り札」の一つとして考えていた「協業化・集約化」については、本調査研究を進めるうちに、想像以上に実現が難しいと言うことが分かってきた。そして、調査研究の過程で行ったアンケート・ヒアリングの結果や委員会・小委員会での議論を振り返ると、内航海運業の将来について、非常に悲観的な意見が多く、いいしれぬ「閉塞感」が感じられたのも事実である。

一般に「経済予測」というのは、天気予報ほど当たらず、内航海運業の将来像を予測することは簡単ではないが、いくつかのキーワードとともに内航海運業の将来像を検証し、次の世紀の内航海運のあり方について考えてみたい。

 

「環境」

平成12年1月31日。神戸地裁で尼崎公害訴訟の判決が下された。

この中で、我が国の大気汚染訴訟史上、はじめて排気ガスの差し止め請求が認められた。このことは、我が国の「環境」に対する社会意識の高まりの象徴ともいえる。次世代は、間違いなく「環境」が一つのキーワードになるであろう。しかし、内航海運は、環境に優しいと言われながら、現段階では、環境=内航海運という図式が社会に浸透しているとは言い難い。これは、いくら環境に良い輸送機関であっても、荷主にとって、他の輸送機関とのコストの差が許容範囲に収まるものでなければ、利用は難しいということであろう。

しかしながら、やはり、次世代においては、内航海運に対する期待は高まると考える。

 

 

 

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