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先日、フィリピンから逆輸入された廃棄物の処理に3億円近くの費用がかかったとの報道があった。また、実際に排気ガスの差し止めを実現するためには、低公害車の開発やインフラの整備等の莫大なコストが問題になるであろう。「安全」と同じように「環境」にもコストがかかるのだ。今後、「環境」のコスト化が進んだときに、「内航海運」に対する期待が一層高まるであろう。

 

「一国一城の主」

本調査研究の過程において、「一国一城の主」という言葉がよく聞かれた。一杯船主の心意気を表す言葉とも受けとれる。この「心意気」は、本調査研究においては、「集約化・協業化」を妨げる一つの大きな要因とされたが、一方で、一杯船主のこうした心意気が現在の内航海運業を支えてきたということも事実である。トラック事業等とは異なり、数億円する船舶1隻とその乗組員を一元的に責任を持って管理することは、一つの「中小企業」の形態として著しく不都合とはいえないと考える。問題は、各々の一杯船主が、どういう形態であるにせよ、「職人」ではなく、「経営者」としてのコスト意識や経営センスをより身につけることではないか。

 

「革命児」

今後、荷主の統合、物流コスト削減方策は一層拍車がかかるであろう。このことにより、荷主としても、従来の「人情」にとらわれず、より安く、よりサービスのよい運送業者を選択することになると考える。

このような状況を踏まえ、次世代においては、例えば、以下のような「革命児」の到来を期待したい。

「多数の支配船舶を有し、インターネット等の高度の情報通信網により、全国の船舶と荷主の状況を常にきめ細かく把握し、他の輸送機関とも連携して、荷主に対して高度の企画提案力と交渉力をもつオペレーター」

きっと、激動の時代が「革命児」を生むことであろう。

 

4. 「運命」は「心」で変えられる

以上は、いわば「絵に描いた餅」であり、実際に、内航海運業が将来どういう姿になるかは、社会情勢の動向、制度、インフラの整備状況などによるであろう。しかしながら、やはり「運命」は「気持ち」により開かれると言いたい。

 

心は行動となり

行動は習癖を生む

習癖は品性を作り

品性は運命を決す

「大仙院」掛け軸より

 

 

 

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