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「内航海運業は本当に共倒れになるのか」

「内航海運」について考えてみる。船腹調整事業は、「制御棒」としての役割を果たし、過当競争を避け安定輸送に寄与してきた。しかし、30年以上「制御」してきて、日本経済が成熟期に入ったこととも相まって業界に活力が失われてきたことで、「制御棒」を抜くこととされた。

したがって、今後、内航海運業界としても、市場のエネルギーに耐えられるしっかりとしたルールと枠組みが必要になり、また、事業者自身もこのエネルギーに耐えられるだけの体力が必要になってくる。

むろん不安はある。筋書きはない。「神の見えざる手」に委ねるわけだ。事業者にしてみれば、これだけ運賃が下がり、これ以上の競争は共倒れを招くと懸念する事業者も多い。果たして本当にかかる結末を迎えるのか。こうした「結末」に対しては、少なくともふたつの視点が抜けていることを指摘したい。ひとつは、「競争」により内航海運業全体として成長する可能性があるということ、もうひとつは、他の業界でしばしば見られるような「革命」が起こる可能性があるということである。

 

2. 内航海運業界に「スクイズ・バント」は生まれるか

日本では、野球が盛んである。

プロ野球のルールというのはコミッショナーで定められ、そのルールの下で選手が実際にプレーをし、監督はその選手を戦略的に動かすことになっている。そして審判はルール通りに選手がプレーしているかジャッジする。

 

「速い球の投げられないピッチャーの話」

規制の多い事業環境というのは、乱暴に言えば、ピッチャーはボールを決められたスピード以上で投げてはならない、バッターはボールを決められた距離以上飛ばしてはならない、ランナーは盗塁してはならない野球の試合のようなものだ。そして、審判も、あんまり無茶な試合にならないように、試合の戦略に口を出す。

こうした環境では、確かに、勝負が必要以上に加熱することは避けられるかもしれない。お互い、激しいプレーによる疲労や怪我で試合ができなくなるようなことはないかもしれない。

しかしながら、こうした環境というのは、あまり長い期間続くと、なれあいになって、ゲームにも活気がなくなってくるのではないか。こうなると、観客もゲームに魅力を感じなくなってくる。野球しか娯楽スポーツがないうちはいいが、サッカーなどの他のスポーツでより魅力的なプレーが見られるとなると、プロ野球の観客動員数は減り、プロスポーツとして成り立つことが難しくなってくるかもしれない。

 

「どうすれば観客が戻ってくるか」

野球人気を取り戻すには、どんな方法が、考えられるか。「プロフェッショナル」である以上、観客が求めているプレーをすることであろう。結局は、野球界全体として、観客がプロ野球に如何なるものを求めているかを把握し、それを提供するよりほかない。

 

 

 

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