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2.0 環境の中のメタノールの分配

 

2.1 環境区分の間のメタノールの分配

 

この章の目的は大気、水および土壌という媒体の間におけるメタノールの平衡分配について述べることである。分配は溶解度、蒸気圧および吸着性を含むメタノールの物理化学的特性や環境区分の物理的および化学的特性に直接関連している。

ある化学物質がひとつ以上の媒体(例えば大気と水)から構成される環境に漏洩した時、その化学物質は、化学的熱力学という科学によってうまく説明されているプロセスによって、これら二つの媒体へ向けて分配される傾向がある(例としてThibodeaux、1996年;Sewarzenbachその他、1993年参照)。ひとつの閉じたシステムの中では、それぞれの媒体の中の化学物質の濃度は、平衡が達成されていると仮定して予測することが可能である。活発な変化が起こっているひとつの開かれたシステムの中では、媒体の間で絶え間ない移動が起こる可能性がある。これらの変化の数値は当該化学物質の消滅と移動を予測する上で重要である。しかしながら、この分析の目的のために、単純な平衡モデルを設定することで、環境媒体の間で、例えばメタノールのようなひとつの化合物が相対的にどのように分配されるかを評価するための基礎を得ることが出来る。

 

2.2 大気/水の間の分配

 

大気と水の間のメタノールの平衡分配は、メタノールの濃度が100,000ppm以下の場合(つまり重量で10%以下)、Henryの法則を使い予測することができる。Henryの法則の定数は、大気中の汚染の濃度が水中におけるその濃度と平衡になる率を示している。0.05以下の小きなHenryの法則の定数を持つ含有物は、汚染きれた大気が清浄な水と触れるような場合に、ガスの媒体から水の媒体に大きく分配していく(Zogorskiその他、1997年)。表3-6に掲げられたメタノールに関するHenryの法則の定数値は25℃において1.09x10-4[-]である。この数値は極めて低い数値であるため、大気中のメタノールは小さな水滴の中に分配していくだろう。これとは反対に、水の媒体の中でのメタノールはその水の媒体の中にとどまる傾向がある。このため、いったん水の中に入るとメタノールは揮発により取り除くことが困難となろう。

 

2.3 土壌/水の間の分配

 

土壌と水の間の分配係数Kdは、土壌中及び地表の汚染物質の濃度に対する水の媒体の中の濃度の平衡率を規定するもので、土壌と水の間のひとつの化学物質の分配を決定づけるものである。加えて、地下水の流量と比較した地下水の中のある化学物質の動量を推定するために分配係数Kdの値を利用することができる。メタノールのような非イオン有機化合物に関して、分配係数Kdの値は土壌の有機炭素含有量(foc)と有機炭素に基づく分配係数(Koc[L/kg])との関数である。これはKd=Koc・focと表示できる(Schwarzenbach その他、1993年)。focの値は場所に影響され、ほとんどの地中環境においては通常低い数値である(0.5%あるいはfoc=0.005の水準) (Zogorski その他、1997年)。

 

 

 

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