米国におけるメタノールの年間総生産量は過去10年、一貫して増加しており、ガソリンの酸化剤として広く使われているMTBEの生産にメタノールを使用する結果、その成長が持続している。MTBE生産に使用されるメタノールの需要のため、メタノール価格は1994年にピークをつけた。それ以降、生産能力が着実に追加されたことと、MTBE生産者からの需要が減ったため、メタノールの価格は大きく下落することとなった。1992年には米国で約13億ガロンのメタノールが生産され、1995年には22億ガロン、1998年には22億5000万ガロンのメタノールが生産された。1993年において約1200万ガロンのメタノールがM100あるいはM85の形でカルフォルニアの変換燃料自動車のための直接燃料として使用され、その他2億1200万ガロンが他の燃料や(例えば、インディー・レース・カー)、燃料添加物(MTBE)を生産するために使用された。
米国メタノール協会 (American Metahnol Institute―AMI)は2010年までにメタノールの需要は燃料電池自動車だけで年間8億8200万ガロンに達すると予測しており、これは現時点 (1998年)の世界の生産能力の8%に相当する。2020年までにこの需要は現在の世界の生産能力の135%に増加するだろうと米国メタノール協会は推測している(Nowell、1998年)。メタノール業界のこの指数関数的な成長は貯蔵施設や流通施設の数の増加と同様、船舶や鉄道による輸送の増加をもたらすであろう。
1.4 化学的および物理的特性
環境の形態―大気、地下水、地表水および土壌―の中の有機化学物質の活動は、その成分の化学的および物理的特性により予測することができる。メタノールは無色透明でかすかなアルコール臭を持つ揮発性の液体であるが、低い濃度(<10ppm)では検知することは困難である。メタノールはただ1個の炭素原子をもつ最も単純なアルコールであり、水に完全に溶解する。それは他のアルコールや塩素化炭化水素に簡単に解けるが、ディーゼル燃料や植物油、および脂肪族炭化水素の中では溶解度に限度がある(USDOE、1991年)。