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すべての燃料摂取事故の約40%は子どもが家庭に置いてある燃料容器から飲んでしまった結果である。このため、メタノールに特殊な色、味および臭いを付けることが必要とされよう。そのような添加物はメタノールを目にみえる炎にするために必要とされたものと同様、改質器の性能あるいはコストに影響を与える可能性がある。米国環境保護庁は、芝刈り機、チェーンソー、草刈り機およびその他の道具のような自動車以外の機器へのメタノールの使用の制限を示唆した。

海洋への漏出

石油あるいはメタノールの大規模な漏出は深刻かつ即座の環境への影響を与えるだろう。しかしながら、メタノールの漏出からの回復は石油の漏出からの回復より早いだろう。

メタノールは水に溶け、急速に蒸発するか、生物分解され、漏出に続くメタノールの濃度は通常、回復が数日以内に始まるほどに低下し、数ヶ月で十分に回復するだろう。加えて、メタノールは水と完全に混合するため、海面や海岸線への目に見える影響はないだろう。

地下水の汚染

メタノールの地下水汚染の可能性に関して利用できる情報は少ない。しかしながら、メタノールの生物分解はガソリンの中の芳香族炭化水素よりやや早く、ガソリンの酸化剤として広く使用されているMTBEよりはるかに早い。また、メタノールの非常に低い濃度は、長期的な健康への影響を持つとは思われない。

他方、メタノールは水と完全に混和するが、このことはメタノールが地下水脈に急速に拡散することを意味している。そしてメタノールは無臭、無味、無色であることから、水系への大規模な漏出に際し、地下水の中のメタノールを検知する簡単な方法がない。米国環境保護庁は、この燃料に色、臭いあるいは味を付けるための添加物の使用が、メタノールを地下水の中で検知するための基本であると述べている。

消費者がメタノール燃料に関する安全性と地下水汚染の可能性に対しどのような反応をみせるかを判定するためには、さらなる研究が必要である。メタノールに関しては多くのことが知られてはいるが、輸送燃料として広く導入される前に、その安全性、健康と環境の側面が注意深く評価される必要がある。すべての新しい燃料に関しては、MTBEのガソリンへの導入の際に示されたような、予測できない結果や社会の反応に関する可能性が十分に考慮される必要がある。

 

 

 

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