日本財団 図書館


もう一つは、燃料電池システムのための水の回生である。燃料電池からの生成水は、改質反応において水素の生成量を最大化するためメタノールに混合され、改質器に供給される。開発された40フィートのりん酸型燃料電池バスは屋根にラジエターを取り付けているが、そのラジエターは、燃料電池などを冷却するエチレングリコール冷却水からの熱の放熱及び燃料電池からの水蒸気の冷却に使われている。屋根にはすでにラジエター面積を増加させるだけの面積的な余裕はなく、もしハイブリッドシステムを用いない場合には、燃料電池の容量は倍になるので、冷却システムの容量を増加させなければならない。そのためより革新的で効率的な冷却システムの構築が必要である。

 

2.2.3 カナダの燃料電池パートナーシップ 2-2-3)

カナダには、燃料電池の世界的なリーディングカンパニーであるバラードパワーシステムズ社があり、政府としてこの技術の実用化のために大きな支援をしている。1999年には、燃料電池自動車技術開発支援のためのプロジェクトが発足したのでその内容について紹介する。

ペトロカナダ社、バラート・パワー・システムズ社およびメタネックス社は1999年6月11日、次世代の燃料電池自動車の普及に備え、率先してカナダ国内での代替燃料の供給体制を整えていく意向を明らかにした。そのプロジェクトの概要を図2-2-4に示した。

ペトロカナダのスタンフォード最高経営責任者(CEO)、バラードのラスール会長兼CEO、メタネックスのショケットCEOは、カナダのグッデール天然資源相やブリティッシュ・コロンビア州のマグレゴー環境・土地・公園相の立ち会いのもと、5年間の協力提携をうたった覚書に調印した。ペトロカナダとバラード、メタネックスは共同で、今後予想される燃料電池自動車需要に対応すべく、商業的に実現性のある燃料供給網を確立することを目指すことを目標としている。燃料電池自動車の導入を促進するため、適した燃料(まずはメタノール)の供給・流通などを含む試験的プロジェクトの基礎を築くことが当面の計画である。

同3社は、燃料電池自動車に関する試験的なデモンストレーションプログラム(メタノールなどの燃料の供給、流通、販売)の確立を目指すための取り組みを行うほか、自動車メーカーなどの試験用地の特定や開発途上の技術を消費者レベルで提供していく。バラードは、運輸部門用、発電用、ポータブル製品用のプロトン交換膜(PEM)燃料電池(ゼロエミッション)の開発・生産・販売では世界のトップメーカーである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION