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2:海域の地勢分布

 

東アジアの地勢分布は、海洋資源開発を含む地域の海洋環境管理をより複雑にしている。海洋法条約(LOSC)による管轄権拡大の結果として(すなわち、12海里の領海と200海里の排他的経済水域(EEZ))、そしてインドネシア、フィリピン等の群島国家おける群島水域)、東アジア海域の大部分は(重複する領海に対する主張の対立も含む)領海、(同じく主張が対立する)資源豊富な排他的経済水域(EEZ)、そして物流のための重要な海峡やチョークポイントから成り立っている。アジアの東の海岸線に沿って、大陸と沖合いにある群島や島々との間には、サハリンとカムチャッカ半島から日本海列島へと伸び、フィリピン諸島からインドネシア諸島、北オーストラリアへと、閉鎖海や半閉鎖海(9)が次々と続いている。これらの海は、北から南へ:オホーツク海、日本海、黄海、東シナ海、南シナ海、シャム湾、ジャワ海、スールー海、セレべス海、チモール海とアラフラ海である。領有権争いが起きているKuril諸島、尖閣、西沙や南沙の各諸島といった諸島の数の多いことがこれらの海域の状況の複雑さに更に拍車を掛けている。このような地域において、海域及び海洋資源についての管轄権を完全に行使することは非常に困難な課題である。

 

3:海上境界線

 

近年、南沙諸島の領有権争いが多くの関心を集めたが、海洋管轄権の解決を巡る問題は南シナ海に限られたものではなく、東アジアの周辺海域のあちらこちらで急増している問題である。「良い垣根が良い隣人を作る」(10)という古い格言があるが、様々な理由により、特に海の場合には良い垣根を築くことが物理的に不可能である。これは東アジアの周辺海域の現状を表していると思われる。なぜならば、表1と表2に示されるように(中国以外の)全ての周辺諸国が排他的経済水域(EEZs)を一方的に主張しているが、現在のところ向き合い、または隣接した国家間の排他的経済水域(EEZ)境界線は1つとして引かれていない(11)。

この論文の中心となる論題は、アジア太平洋地域の多くの海上境界線が短期間に合意には達することはなく、係争中の海域とその資源開発に当たって、一方的な管轄権や資源の独占に基づかない別の方法を見つけ出す必要性についてである。領有権問題が地域の安全保障上の1つの不安定要因として一掃されない限り、これらの方策を進展させることがこの地域における海洋問題への根本的な課題である。

表1は東アジアの海上境界線を示しており、表2は現在のこの地域における各国の海洋管轄権の主張を示している。次に述べるのは隣接、または向き合う2国家間において海上境界線を確立するための方式である。

 

 

 

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