1:はじめに
日本および韓国における貨物輸送量(トンキロベース)全体に占める内航海運活用割合は世界主要国において最も高い水準にある。石油製品輸送量においても日本に付いて更に高い割合で、主要な輸送手段となっている(1) 。
近年石油産業が自由化され物流効率化等を含め合理化が急進展し、複数石油会社の戦略提携による油槽所の統廃合および製油所からの中距離ローリー輸送量が増加等する中で内航タンカー船腹の余剰も懸念されている(2)。一方、世界においては北米自由貿易協定および欧州連合等の進展による国家を超えた経済合理化過程にあり(2)、東アジアにおいても日韓中3国の経済圏形成が重要である(3)との見解も出されている。本稿では、日韓石油産業の世界的規模と将来的自由化について着目し今後の効率化可能性に付いて定量的試算を行う事とした。試算に当たっては日韓の石油精製・輸送モデルを開発し日韓石油産業の連携オプションの効果に付いて分析した。
効率化検討の結果、連携オプションの経済効果は年間3〜4億米$程度となる場合もあり、物流面における日韓間の石油輸出入量は大幅に増加し30〜38百万KL(1997年の2.7〜3.5倍)となった。今後の日韓地域における石油産業の効率化検討のためには日韓石油タンカー輸送能力の将来に付いてのより詳細な検討が必要であることも分かった。
2:アジア石油市場の将来展開
2.1.:アジアの石油市場は、80年代後半からの経済発展によって本格的な成長が始まり、90年代半ばには石油需要、原油処理、原油・製品貿易に付いて80年代初頭に比べて2倍程度ヘ増加するなど域内石油市場規模が大きく拡大した。石油需要規模は90年の1,300万B/Dから97年には1,800万B/D(約44%増加)まで増加し欧州と同程度となった。このようなアジア石油需要の増加は90年代初頭に停滞した世界の他地域の石油需要をカバーする形となり、アジアでの石油需要の増加がそのまま当該期間の世界石油需要の増加となった。
2.2.:この間石油需要の急増と製油所の活発な建設によってアジアの原油必要量は大幅に増加し、中東を中心に原油輸入が拡大した。域内原油生産の増加が鈍化し、アジアの中東原油依存度は近年まで徐々に増大し96年には90%に達した。このようにアジア石油市場の中東依存は著しく高まっており、90年代に入って欧州、米国向けに比べると中東産原油のアジア向け価格に相対的な割高感が生じている(図−1)。