このタイプの監視体制は、アジア太平洋地域では多国間(例えば南太平洋フォーラムにおける漁業監視協力)及び2国間(例えば、オーストラリア・インドネシア間のチモール水道の監視及びマレーシア・インドネシア間の公害モニタリング)措置といった先例がある(*10)。
III. 抑制措置(表3)
抑制措置には危険削減措置、締め出し/引き離し措置及び人員、装備、行動についての抑制の3つがある。
○危険削減協定
海上における事故防止協定のような協定、軍隊に対して行動規約を明確に示すことによって、危険に際しての協議と通信を義務づけ、本質的な危険あるいは偶発による軍事行動が重大な事態に発展することを禁止あるいは抑制するために考え出されたものである。この協定は作戦部隊を過度に、抑制することなく相互に望ましくない結果を規制するのに役立つので、これまで政治的緊張緩和の初期の段階でよく使われた。多くの海軍(特にアジア太平洋の)が、冷戦後の環境下で行動範囲も能力も拡大しており、2国間及び多国間/サブ地域的INCSEA協定は潜在的に重要なCBMsである。背景にあるものは、1972年の米ソ海軍間(INCSEA)協定が、最初の冷戦デタントの産物であり、主要国海軍間での画期的な緊張緩和と信頼醸成措置であった(*11)。衝突の危険を生じる艦艇の運動を局限し、敵対行動あるいは威嚇と受け取られるかも知れない行動(模擬攻撃その他)を禁止し、そして特別な通信手段を制定するための特別な規則が制定されたのである。米ソINCSEA協定は、制定後最初の2年間は地球的規模で相互の行動がより頻繁であったにもかかわらず、両国海軍間の事故を局限する上で目ざましい成功を収めた─この1972年の協定は、1ダース以上に及ぶ最近の同様な2国間INCSEA協定のモデルとなると共に、より広範な統合/総合参謀レベルにおける危険な軍事行動防止に関する1989年米ソ協定(DMA)のモデルにもなった。