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この仮定は、海軍と貨物船が目的地到着のために陸地(石炭燃料の補給基地)に依存する限りは、すなわち昔は正しかった。しかし、石油炊きエンジン時代の到来と、それに続く船舶エンジンの技術革新によって、海上船舶は、徐々に、より長い期間と距離を、陸地のサポートシステムに頼らずに航行できるようになった。貿易のグローバライゼーションと船舶エンジニアリングの継続的な進歩が結びついた結果、今日のシーレーンは地形要因との関係によってのみ規定されるものではなくなってきている。

軍事計画参謀の目的とは正反対に、海上貨物船は、A地点からB地点に至るまでの収益を最大限とすることを目指している(今日の船舶のタイプが広い範囲にわたっていることを考慮すると、単純化しすぎではあるが)。たとえば、コンテナ船、自動車運搬船、液化天然ガス運搬船は、高付加価値サービスを提供している。そこでは、顧客の要求するデリバリ・スケジュールに合致することによって、売上の大きな部分が生み出される。バルク船の場合、利益はトン・マイルの尺度から生み出される、即ち、貨物を積んで航行するほど売上はあがる(中東から希望峰回りで北欧に運ぶ方が、同じ貨物を北アフリカからマルセイユに運ぶより2-3倍儲かる)。

SLOCが閉鎖されるシナリオに於いて、スエズ運河を例にとって見れば、軍と貿易との違いはいっそう明確になろう。大西洋と地中海で行動している海軍にとって、スエズ運河を失うことは、危機に対応するリードタイムを複雑化させる。しかも、一海軍の能力を他の海軍と交換すること(即ちインドの海軍でもって米国大西洋艦隊を代用すること)は不可能である。本当の大洋横断的な海軍のみが効果的な対応をしうるのであって、今日ではそれは米国しかない。対照的に、経済的な対応はよりフレキシブルである。商品が代替可能であるばかりでなく、供給国も代替可能である。例えば、発電のためには、石油や天然ガスに代わって石炭を使用することができる。さらに、豪州やインドネシアのようなスエズ運河の東の石炭供給国の代わりに、スエズ運河の西のブラジル、米国やカナダの石炭供給国に石炭を求めることもできる。

さらに、迂回によって航行距離が延びるため、船主はより多くの利益を得ることができる。スケジュール通りの運行をしているコンテナ船などにとっては、運河閉鎖は問題になりうる。しかし、取りうる手段は他にたくさんある。たとえば、より大型でより速い船を傭船することで規模の経済性を追求することもできるし、ハブとフィーダー船を用いることも、海上輸送の一部を鉄道やトラック輸送に切替えるなど異なった輸送モードを組み合わせることもできる。

したがって、今日、海軍にとっては、マハンの時代と変わらず、シーレーンに依存するところが比較的大きいが、海上貨物運行に関しては選択肢は大きく広がっているといえる。両者の違いは第二次世界大戦後の海運業界に起こった世界的な著しい変化を反映している。

この変化は、SLOCの経済価値についての紋切り型な見識がなぜ時代錯誤的なものであるかをある部分まで説明している。

 

 

 

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