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まだ記憶に新しいロシアタンカー「ナホトカ号」の日本海での遭難では、原油が流出し自衛隊に災害派遣要請が行なわれた。事態収拾のために多くの人的、及び物的資源が投入された。

したがって、安全保障に直接的に携わる人々が、問題を良く理解することがまず必要であろうが、それは一言で言えば、「魚を巡る問題」「海底エネルギー資源を巡る問題」が将来の紛争の起源となりうるという認識をもつことである。そして、万一紛争が起きた場合に、問題を律する第一義的な国際法である国連海洋法条約を、あらかじめよく理解しておくことが、必要なのである。

日本はこの条約の加盟国である。さらに、日本の周辺諸国には本条約に好意的な国が多い。こうした諸国が国連海洋法条約を「自国の国益確保のために都合良く援用する」可能性は当然考えておくべきである。日本も、条約に基づいて正当な主張をすべく理論武装を怠るべきではない。

国連海洋法のとくに後半部分は、外務省や農林省のみが研究しておればよいというものではない。安全保障のために実際に行動するのは、防衛庁や自衛隊であり、特に海上自衛隊や海上保安庁の任務は重い。

不審船の追跡や、銃撃戦という安全保障問題のハードコアばかりをおいかけていると、国連海洋法条約の前半部分のみの研究・学習に終止しがちであるが、漁業資源や深海底資源探索などを国連海洋法条約の下でどう扱うことができるのか。これを研究することも国益にとっては同じぐらい重要なことではないか。

この論文は、国連海洋法条約の後半部分に関心を持ち始めた人達への最適の入門文献と言ってよいだろう。 (Y2&A0)

 

 

 

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