平成11年 公海の自由航行に関する普及啓蒙事業 海外論文翻訳シリーズ(論文解題)
Robert Friedheim(南カリフォルニア大学教授)著
「変貌する国際海洋秩序:国連海洋法条約のインパクト」の論文解題
第22章 国連海洋法のEEZ中間線等の境界線確定
日本の安全保障関係者はもっと注目すべきだ
公海の自由航行に関する普及啓蒙事業・事務局
はじめに
日本が将来周辺諸国との紛争に巻きこまれるとすれば、可能性が高いのは、全面的な戦争というよりも、むしろ海洋資源の帰属をめぐる問題を契機としてではないか。すでに、この地域では、あらゆる国が海底油田、漁業資源に関心をもっているといいても過言ではなく、実際に紛争も起きている。国連海洋法のEEZ中間線等の境界線策定問題がクローズアップされるゆえんである。
ここに紹介するRobert Freidheim, 'Changing the International Maritime Order: the Impact of UNCLOS III'は、このような将来の問題を考えるための格好の手引きとなる文献である。この論文は、国連海洋法条約の第三次海洋法会議における条約策定交渉における主要な論点と議論を簡潔に要約し、国連海洋法成立の歴史的背景を理解するにも便利である。
この論文は、平成11年度「公海の自由航行に関する普及啓蒙事業」の海外重要論文全訳シリーズの一環として翻訳された。
ここでは、翻訳者とは別の独自の立場から、この論文の要点を紹介する。さらに、この論文を理解するために最低限必要な国連海洋法の成立過程を解説する。また、この論文の欠陥を批判するとともに、安全保障の専門家にとって、なぜ、この論文が重要であるかを論ずる。論文の構成は次の通りである。
A. 国連海洋法条約と国際海洋秩序
B. 法秩序としての国連海洋法条約
C. レジーム形成のために討議された事項
1 沿岸海域
2 大陸棚
3 公海
4 人類共同の財産
5 国連海洋法条約における紛争解決
D. 国連海洋法条約の修正
1 第11部の改正
2 漁業の管理
E. 結論