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最後に海運システムを巡る障害について。

海運システムの運用面から見て、一旦緩急あった場合に船舶が一ヶ所に過度に集中する様な事態が生ずれば、運航船舶の振り回しのリズムが崩れて海運の大混乱を招く可能性もある。

その他航行システムの損傷あるいは機能低下による障害、船員の人員不足あるいは訓練不足による障害、ターミナルである港湾機能に関連するハード・ソフト両面の障害等予測し得る限り対策を講じておく必要がある。

 

5 おわりに

 

一般的な風潮として、シーレーンの重要性については漠然と感じてはいるものの、深刻に考えることなく、空気や水の如く天から与えられたものとして、その恩恵を享受しているというのが現在の世相であろう。

しかし、シーレーンの持つ意義について改めて確認し、楽観的な思い込みを廃して冷静且客観的に分析してみれば、何か一つ歯車が狂えば忽ち国家の生存と繁栄に影響を与える脆弱性を有していることが理解出来ると思う。

 

特にアジア太平洋地域においては、冷戦後も戦略的な不安定要素を一掃出来ない状況にあることは周知のとおりであり、このことは、地域におけるシーレーンの脆弱性を顕在化させる大きな不安定要因が依然として残っていることを意味する。

 

転ばぬ先の杖と言うが、今から先を見越した十分な対策を講じ、シーレーン安定活用のための万全の体制を構築しておくことが肝要である。

 

 

 

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