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例えばユーゴの誤爆事件で、中国とアメリカのミリタリー関係が全く切れてしまいましたけれども、APCに限っては、中国との対話はスローダウンしたけれども、続いていた。例えばブレアさんが誤爆事件の3週間後に中国を訪問したのも、このセンターの関わりがあったからであるということでありました。

ブレア太平洋軍司令官で思い出しましたが、山本さんは99年7月のブレア氏の発言の重大性について、APCSSでお話をされましたね。

 

15:中国に誤ったシグナルを送ってはならない

 

山本 李登輝総統が台湾と中国の関係について、「国と国との特殊な関係」との発言をしたのは99年7月ですが、その直後に、日本を訪問中のブレア太平洋軍司令官が記者会見で「当分の間、中国が台湾を制圧する能力はない」と言ったとの記事が日本の新聞に小さく出ました。わたしは、7月末に台湾を訪問した際、李登輝総統との懇談の際、この発言について「これは、台湾が中国に軍事的に対抗できるという意味だけではなく、行間を読むと、有事のさいには、米軍がコミットメントするぞという前提あるいは意図が込められている」という意味のことを言いました。このような時期に、ともすれば疑心暗鬼に陥り、腰砕けになるかもしれない台湾の人達に自信を与え、中国に誤ったシグナルを与えないためにも、ブレア発言の持つ重要な意味を伝えたかったのです。

小川 それに対して、ラッキーさんは、「アメリカはいつもはっきりとは言わないが、台湾が攻撃された場合へのコミットメントをこういう形でちらちらと表す。ただし、台湾側から兆発したら、台湾を助けるわけにはいかないが」という説明がありました。

 

16:APCSSは研究機関というよりは、地域安全保障の教育機関

 

川村 ちょっとそれに付け加えますと、APCSSは研究機関というよりは、性格的には地域の安全保障のための教育機関でしょう。アメリカの国防政策や安全保障政策を政府とは別の面から推進する機関です。しかも、10〜15年という非常に長いレンジを見越した投資としてなされている。さらに、最新のシステムやインターネットなど強力なコミュニケーション手段を習得させ、そしてそこでお互いに志あるもの同士が知り合い、お互いに啓蒙しあいながら学ぶ場です。そして3ヶ月(12〜13週間)の教育を終われば、それぞれの国に帰ってさらに重要な地位を占める人たちを集めている。そういう人たちのネットワークをAPCSSが中心になって作っている。これは非常に素晴らしいやり方だと思いました。

そして、なにをやるにしても、アウトソーシングして徹底的に経済合理性を追求している。まわりはワイキキですから、宿舎にしろ、会議をやる場所にしろいっぱいあるところですから、競争させながら一番安い方法でやれるのでしょうが、非常に印象深いものでした。そういう意味では、計画は成功していると思います。

 

 

 

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