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4月11日からガイドパイプ受け台と12本の杭が海上輸送されて現場の海底に固定され、ついで採掘・採油プラットフォームが17日に蔚山を出て23日に現地に到着。据え付け工事は4月22日から開始され、28日に完了した。このような巨大な施設の組み立てがわずか1週間で行なわれた。大型バージ4隻、バージ・タグ4隻、物資供給船2隻、9000トンの大型浮きクレーンが集合し、18ヵ国、400人に近い労建設者が海上で作業した、と報じられている。

上海に輸送する石油と天然ガスの2本のパイプを敷設する工事は、1997年10月30日上海浦東地区で、翌1998年4月15日の完成を目指して着工された。1本は石油用で306キロメートル、舟山諸島岱山島に建設される原油給油所に送られる。ここには2万トン級タンカーが停泊できる原油中継埠頭、2000トン級の工作船埠頭、5万立方メートルの原油貯蔵タンクなどの施設が建設された。もう1本は天然ガス用で、375キロメートル。岱山原油供給所を経て、上海南匯天然ガス処理場に送られる。同年6月30日までに工事は完了し、試運転が行なわれた。総工費50億元、約6億ドル、アジア開発銀行から1億3000万ドル、日本輸出入銀行から1億2000万ドル、欧州投資銀行から6900万ドルの借款によってまかなわれる、と公表されている。

今回開発される平湖ガス油田第1期工事面積は約20平方キロメートル、天然ガス108億立方メートル、コンデンセート油177万トン、軽質原油1078万トンが埋蔵されているとみられており、毎日140万立方メートルの天然ガスが少なくとも今後15年間上海浦東新区に供給される。浦東新区には民家や工場へのガス供給パイプが敷設された。1998年12月28日には、11月18日に採掘された原油が27日上海に送られたと報道された。

 

3.3.:日本側海域への強い関心

 

東シナ海の海底は、中国大陸から緩やかに傾斜して、わが国の西南諸島の西約100キロメートルの地点で深く窪んでいる。この窪みは沖縄舟盆ないし沖縄トラフと呼ばれ、西南諸島とほぼ平行して走っている。長さ約1000キロメートル、深さ1000〜2000である。中国政府は中国大陸から沖縄トラフまでを一つの大陸棚、すなわち中国大陸が自然に張り出して形成されたとみて、東シナ海大陸棚全域に対する主権的権利を主張し、同大陸棚に位置しない日本には東シナ海大陸棚全域に対する主権的権利はないと主張する。これに対して日本政府は、東シナ海大陸棚は中国大陸・朝鮮半島から延び、わが国の西南諸島の外洋に向かい、同諸島の外の太平洋(南西海溝)に向かって終わっているとの認識に立ち、それ故東シナ海大陸棚の画定は向かい合う日本、中国、韓国の中間で等分するという中間線の原則に立っている。これが日中中間線である。

いずれにしても石油開発の前提は、大陸棚の境界画定である。そして中間線の原則も大陸棚自然延長の原則も、国際法上有効な考え方であるから、東シナ海大陸棚の境界画定は政治交渉で解決するほかない。しかしこのように中国側が積極的に開発を進め、中間線のすぐ向こう側の海域で開発が進んでいるのであるから、日本側が早急に線引きしないと、中国が中間線を越えて、日本側海域に入ってくるのは時間の問題である。

 

 

 

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