平成11年 公海の自由航行に関する普及啓蒙事業 書き下ろし論文シリーズ
特別寄稿論文
第11章 南シナ海と東シナ海に進出する中国 その戦略と目的
平松茂雄(杏林大学社会科学部教授)
1:東シナ海についに軍艦が現われた
2:中国海軍の南沙群島進出
2.1.:先ずベトナム海域、ついでフィリピン海域に進出
2.2.:独立作戦能力を備えた海軍力
2.3.:米軍がプレゼンスすれば安全か
2.4.:中国は軍事力を行使するか−−威嚇手段としての海力軍
3:東シナ海に進出する中国
3.1.:積極的な東シナ海石油開発
3.2.:平湖ガス油田の完成
3.3.:日本側海域への強い関心
4:わが国に必要な国家戦略
1:東シナ海についに軍艦が現われた
1999年5月14日から16日にかけて、わが国の領土・尖閣諸島の北方約100キロメートルで、わが 国の排他的経済水域(第3図の「日中中間線」の文字の周辺海域)に、中国海軍の「江湖I級」ミサイル護衛艦(1,720トン)1隻、「侯興級」ミサイル護衛哨戒艇(478トン)4隻、「河谷級」ミサイル哨戒艇(205トン)3隻、「海南級」哨戒艇(392トン)4隻、合計14隻の艦艇が出現した。小型で旧式の艦艇であるが、編隊を組んで陣形運動や対艦ミサイルの発射訓練を行なったりしながら、わが国の経済水域を繰り返し出入りした。その後『産経新聞』が報じたところでは、それ以前の3月から4月にかけての時期に、哨戒艇数隻が同じ海域を航行していた。さらに7月14日〜19日には、中国海軍の「旅滬級」ミサイル駆逐艦(4,200トン)1隻、「旅大級」ミサイル駆逐艦(3670トン)3隻、「江威級」ミサイル護衛哨戒艇(2,250トン)2隻、「江湖I級」ミサイル護衛艦(1,720トン)2隻、「大江級」潜水艦救難艦(12,975トン)1隻、「福清級」(21,750トン)洋上補給艦1隻が尖閣諸島の北方約130キロメートル〜200キロメートルの海域に出現した。特別の訓練を実施することなく遊弋した。