高瀬 それでなんとなく昔のベネツィアの通商時代に戻ったのかなと思いました。シーレーンの周辺にいろいろな基地を備え付けないと、シーレーンの安全の確保ができないような時代を作り出そうとしているのかという感じを受けましたね。
平松 結局、いままではアメリカがいたから問題がなかったわけですね。それがアメリカが退いて、そのあと放っておいたから、その空白を埋めるような形で中国が出て来た。そうでなくても、いずれは出て来たでしょうけれど、結果としてそういうことになってきた。そうなって、周りの国が非常に不安になってくるけれど、アメリカが介入しません、関与しませんという態度をとっているわけです。いざとなったら出てくるかもしれないけれど、だんだん取られていくときに、アメリカが私は中立ですよということになれば周りが騒ぐ。
たまたまASEANも経済成長を遂げるようになってくると、そういうことで余裕が出てくれば、軍備を持とうとするようになってくる。いろいろな問題がいっぺんに出てくる。アメリカがいるときには、東南アジアの国は力がなかったわけですが、もし仮に力があって、自分は自分でそれなりの防衛努力をしますよといったら、アメリカは絶対に反対して、そんなことはしなくてもよろしい、俺がいるから大丈夫だといったと思うんですね。
今度はそれがアメリカの都合でいなくなって知らん顔されたから、慌てふためいて東南アジアがやっている。一国では駄目だから一緒になってやろうといっていろいろなことをやってきて、ASEAN地域フォーラムなんていうのができてくるけれど、いざ実際に現実の問題になってくると、去年のASEAN地域フォーラムがそうだったけれど、お互い同士、マレーシアとフィリピンが島の領有をめぐって喧嘩しているわけですからね。
63:ASEAN地域フォーラムは共通の敵という認識のない単なる仲良しクラブ
要するに共通の敵は中国だという認識で合意ができない。そこが一番悪いわけで、ASEAN地域フォーラムというのは単なる仲良しクラブに過ぎないわけですね。行った首相なんかが、それぞれの地域の民族衣装を着て手をつないで写真を撮って晩飯を食って、なんていうのは仲良しクラブに過ぎないじゃないですか。(爆笑) 結局、肝心な問題になってくると、何が共通の利益なのか、裏返していえば共通の敵は誰なのか。共通の敵といったらあからさまだから、ほんわかと言えば、共通の利益は何かと言うことですね。共通の利益がなかったら一緒になろうといってもなれっこないわけですから。そういう意味での共通の認識がない。誰かが主体となって、一国でなくてもいいから、中心となって動かすところがないといけないんだけれど、それが出てこない。どこかが出てくると、あいつは何か野心をもっているんじゃないかといわれる。インドネシアがやろうとしたらインドネシアは危ないんじゃないかということになってまとまらない。
では日本がシーレーンを使っているんだから恩恵を受けているんだから、日本が積極的にやったらどうかということになるけれど、日本が行ったらまた軍国主義じゃないかとか言われるから、日本もそんなことはいやよ、と言ってやろうとしない。
みんなそんな状態で、結局共通の利益がなんであるかがはっきりしないから、仲良しクラブでゴルフのコンペをやっているような姿でしかない。