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大内 最初からずっと説明しています。カナダが関わったところから。

小川 これを読めばSEAPOLの歴史がわかるということですね。それから、もう一つの束になっている資料の一番上に、New Challenge Super Projectというのがございますね。

大内 歴史でいちばん大事なところは、官民すべて一体になっているというところです。国家間、政治間の機関ではないということ、民間といっても政府の官僚も入っている。したがってそこで語られることは、相当の国に対して影響力を持っているという組織です。

日本財団 アメリカの場合は海洋法のちゃんとした機関がありまして、国務省の外交の影響を及ぼすことにすぐ諮問できるようになっています。韓国もそうですし、中国もそうです。海洋なんとか研究所というのがあって、それが直々に政府と通じているわけです。日本にはないんじゃありませんか(川村 ありません)。それを国際法学会でも学会の中に海洋法研究会というのを作りましょうとかという話をしたら、「そんなことをしたら外務省から嫌われるよ、君」と言われたことがあります。つい数年前です。韓国の海洋法研究会も、そこには外交官が来て、外務省が必ず出て来て、聞いていますね。そういうところがないんですね。

川村 この研究会では、そういう意味では、広く全般に安全保障まで含めて、環境から漁業、資源問題、海運の問題、安全の問題、全部広くやっています。そういう会合には、外務省からも若手の方がちゃんと来て聞いていただいていますので、ある程度反映はされると思うんです。おそらく全部縦割りですから、それぞれの省庁には自分の担当する問題を研究する機関はあっても、総合的にやるところは日本にはまずないと思いますね。このあたりは、何回か海外に調査に行かせていただいて、その辺のところがいちばんショックを受けたところです。日本にはまだ総合的な海洋政策の研究所がないということです。

大内 私は、いまからのやり方としては、民間も一緒。国際法もいまは国際私法と同化しつつありますので、民間を入れて、官僚もできれば中に入ってくればいいんじゃないかと思います。

川村 トラック・ワンといいますか、官公庁のものですと、その時の政府の政策に左右される。その時のことはいいが、その先のことには言及できません。トラック・ツーというか、ここでやっているような民間の組織作りは最適だと思います。

大内 しかも外務省の海洋法本部は二年おきに人が替わるでしょう。一人の人が、前任者のことを受け継ぐので一所懸命だと思いますね。そういう意味では民間の方も入れましてね。

平間 前回の海洋法会議の時には、「あなた、あなた、あなた」と外務省の担当者が専門家に聞きまくり、その意見を聞いてなんとかやっているということでしたが、それで最後には、「あなたカラカスの会議に行ってくれ」と言われた海上自衛隊の人が行ったと聞いています。

 

23:外交官試験に出る山本国際法の問題点

 

大内 学者がゴボウ抜きされて行くわけですね。ですから、いわゆる提灯持ちばかり行くんです。山本先生も立派な学者ですが、山本国際法は、イギリスの古い国際法です。オックスフォードの国際法は、欧米ではずっと遅れているんですね。好き嫌いの問題は別として、山本国際法は、しかしながら外交官試験の基本ですから、みんなそれをやっていくんです。われわれは、欧米のスタンダードと比較しながら、困ったなと言っていますけれどね。

 

 

 

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