そして、後進国が獲ったあともまだ魚が残っていれば、既得権がある先進漁業国にとらせるのです。その段階で日本が入ってくるんです。それは62条によるのです。そのやり方は、まず後進国が最初、それから最後に日本のような歴史的漁業権を持っている国にとらせる。
いま問題になっているのは、このような順序で魚をとらせるのかどうかです。沿岸国が獲ったあとが問題でして、どの国が魚を獲るかについては、沿岸国の自由意志で決めていいのかという話がある。これは、いまはどこもそうなっているようですね。
条文を読みますと、まず内陸国に獲らせて、地理的不利国にとらせて、その次に遠洋漁業の先進国に獲らせると読めるんですが、そこがはっきりしていないのです。したがって、せっかく後進国の食糧事情を良くしようとしてつくった本来の条文が効果を示していない。
それからもう一つは、沿岸国が魚を全部とってしまう場合ですね。残りを出さないことがある。なぜかというと、先進国の漁船を自国の旗に切り換えてしまう。全部とって、とった分は沿岸国の工場で加工して、沿岸国の名前で輸出する。こういうことをやられると、当初の趣旨が生きていない。これは、海洋法の問題ではなくて、国際公法上の問題で、そこから加工まで入る。したがって、ある意味では貿易などまではみ出た形のレジームが必要かどうかですね。その辺をお互いに話し合う必要がある。
こういう資料を見ると、その辺に至るまで、技術を相互にシェアして、無駄のない資源の利用を考えようということが出て来ます。それなりのレジームが必要かなと思います。
小川 通航権と、その漁業レジームの二つが2004年の焦点になるわけですね。
大内 それは地域で許すのか、世界的なグローバルなレジームにするかは別ですが、何らかの形で漁業、魚が有効利用されるレジームが必要だと思います。それから通航権との関連で、軍艦のことは触れない方がいいんですかね。軍艦は従来通り通っていますね。これを敢えて問題にすると、むしろ藪蛇になりますね。
19:通航権の問題は絶対に譲ってはならない
山本 いま先生が言われた通航権の問題ですが、200カイリ内で資源を沿岸国が優先して利用するというのはいいとして、通航権についてレーンを設けることを条件に、自由航行に対するある程度の制約を認めるというのは、困ります。将来、貿易立国であるわが国にとって、大変なデメリットにつながる可能性があると思うんです。
これは、やがてエスカレートしますから、レーン航行中の軍艦にいろいろ制約を加えるようになると思います。現に私は海上自衛隊の遠洋航海で艦隊をブラジルに率いて行ったことがありますが、あそこは100マイル以内であっても、船から飛行機を飛ばすときには許可が要るというんです。飛行機を発艦させるときには、ブラジル政府の許可を得ろというんです。そのようなことを認めると、やがては、200カイリを軍艦が通るときにいろいろな条件を付けてくると思うんです。
これは軍艦の話ですが、その他の船舶についても、同じでしょう。最初は、あるシーレーンを設けて、ここをこういう条件で通りなさいと言って、交通整理をされるようになる。本来自由に通れるところで交通整理を受けるということを認める必要はありません。