それから海峡につきましては、通過通航権と言いまして、一定のレーンをひいて、そこでは公海を行くのと同じ自由通航を保証しているわけです。それから領海については無害通航権が従来通りある。
そうすると経済水域は何かというと、経済水域は公海と同じ自由通航になっていますね。そうすると自由通航だったらレーンを引かなくていいわけです。レーンを引かないでいいのに実際はそこを通ろうとすると、通るなと言われる。これはどういうことかという問題です。
海洋法のいろいろな文献を見ますと、今の通説では、沿岸国の管轄権に対する要求はどの水域であっても領海を含めます。どの水域であっても、従来の通航を制限するときは、制限できないとは言わないけれども、制限をする代わりにレーンを必ず設定しろということになっています。ですから経済水域を通るなということは、必ずしもプルトニウムに関して間違いでないとすれば、プルトニウムを搭載した船が自由に通る航路だけは設定してあげなければ、今の国際法の通説では違法なんです。外国人が書いた論文ですが、そういうふうになっています。さてその点は今後然るべきところで然るべく主張がされていかれればと思います。
そこで私の考えはどうかというと、経済水域は資源の排他的管轄水域ですから、この資源に対する排他的管轄権を守ろうとすれば、ある程度、外国船舶の通航を規制せざるを得ないと思うんです。どちらが大事かの問題ですが。資源水域であるということは、まず資源を守り、それから船舶の航行を保障するということになるはずです。今までは自由通航であったのに対して、新しくそこは資源の排他的水域だとすればそれを優先せざるを得ないでしょう。ところが、この水域は、従来は自由通行権の水域であったわけですから、それを無視するわけにはいかない。なんらかの形で保障するための努力が沿岸国によってなされなければならない。それが「レーンを造る」ということなのです。条約の規定通りに経済水域を自由通航水域にしたら、沿岸国である先進諸国にとっても困る結果になります。そこで、自由通航水域の公海にしておくよりは、ある程度航行を制限した水域として初めからはっきり位置付けておけば、いまさら沿岸国の要請を無視した形で、プルトニウムを密かに通らせる必要もない。
多分、こう言ったことが2004年のレビューの段階で問題になるのではないだろうかと思います。SEAPOLが問題を提起することになるかも知れません。私はもうずっと初めから気がついているんです。そして、SEAPOLの会議では、何回かこの発言をしたんですけれども、誰も取り上げてくれなかった。でも、今回のマニラ会議ではちょっと取り上げられた感じになります。
18:2004年のレジームメーキングに向けて日本がなすべきこと
小川 あと時間が30分ちょっとありますけれども、ちょっと私から質問をさせていただきますと、この2004年のレジームメーキングに向けて、われわれができることはいろいろあると思いますけれども、特にSEAPOLに対してどういう働きかけをしてどうSEAPOLとやっていくことが、先生は日本の国益のためになる、あるいは地域の安定のためになるとお考えでしょうか。
大内 今の通航権がひとつですが、あとは漁業に関する新しいレジームですね。そのレジームは、漁業の加工段階まで含めたレジームです。規定によりますと、各沿岸国は自分のところで獲りたいだけ魚を獲って、獲る必要がない残余、余剰分については、まず後進国にとらせることになっています。