先進国からは、例えば漁獲高の見積もりは、FAOその他の第三者国際機関によってやってもらうべきだという声が上がりました。先進国からは、主観的判断を避けようじゃないかという声があがりましたが、これに徹底的に反対したんですね。
国際機関の学者たちはみんな先進国の人ですから、「そんな主張は絶対客観的ではない」という。それもまんざら嘘でもないんです。たとえば、北方領土の周りのマグロとかサケの予測では、ソ連と日本の魚類学者では10万トンぐらいの違いがありますからね。そういう数字を出してくるのは、取引によって真ん中で数字を割るという駆け引きを前提としているんでしょう。このように、沿岸国は非常に国際機関を疑っております。したがって、あくまでも自分たちでそういう予測をたてるんだといっています。これが、いわゆるサステイナブル・キャッチという問題です。
ところが、そういう時代はどうやら終わりかけておりまして、最近の動きは、自分たち同士で機関をつくろうというものです。SEAPOLは、いわゆるASEAN諸国の中に科学的協力をする機関をつくるべきだと主張しています。そして、客観性の高い収穫高の予測をたてる。結局は、かつて先進国がカラカス会議で非常にねばりっこく主張したことが、今の段階にいたって、彼等の主張になろうとしている。
しかし、ASEAN諸国の中に科学的協力をする機関をいざ作ろうと思ったら結局学者は日本にしかいないことも知っています。学者は、日本やアメリカにしかいないから、そういう形で日本が参画できればいいという話になっています。そうするといまのうちからSEAPOLのようなところに出入りしていると、特定の個人が自然に人間として信頼を受け、そういうところに加わることができるのではないかと思います。
8:SEAPOLの会議にインスティテューションとして出席してほしい
冒頭に述べましたが、本来SEAPOLのSEAはSouth East Asiaですから、East Asiaは二の次なんですけれど、なぜか、SEAPOLが出来て以来、初めからずっと中国も日本も韓国も呼ばれているんです。いったん呼んだあとは、「おまえはEast Asiaだ」などと言って差別はしませんで、どのパネルにも必ず入れます。そして意見を言う。
そして例えば、私がこの前のマニラ会議でした発表では、竹島問題、尖閣、北方領土、日韓漁業の拿捕事件、それから今度の通航権の問題について意見をいいましたし、特にプルトニウムの運送に関する国連海洋条約との関係などについての発表をさせていただきました。したがって、常時そこに入っていることは、日本にとっては、たいへん有益ではないか。ただ、今までは、私のようなどうでもいいような学者が個人で出ているわけです。それが向こう側の国は、インスティテューションが全面に出ているんですね。やはりなんでもインスティテューショナライズしないと効果がありませんね。
ですから私は、そういう意味で、今度、川村さんと小川さんがマニラ会議に来られたのは、これは時代が変わるかなという気がいたしました。
せっかく日本がマラッカ海峡について、業績を残されているにもかかわらず、それがフォローアップされていない。フォローアップというのはいわゆる認識的にフォローアップされていないので、それで惜しいなと思っておりました。インスティテューションとして入れば、いろいろな人がかわるがわる出席できますね。私のような個人の形で行くと、いつ行っても同じやつが出ていて、あいつは何だということになりますし、やはり古びてきます。