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5:SEAPOLの資産的価値

 

いずれにしましてもそういうことで、なにかSEAPOLのようなものをこれからオーガナイズしようと思ったら、相当お金がかかるものだと思います。Canadian International Development Agency (CIDA)が過去20年間に累積で2000万ドル出しています。カナダ政府としては〔1回10年の契約ですが〕2回以上はもう出せないということです。さっき、マクドゥーガルの弟子であると紹介した国際法学者のダグラス・ジョンストン博士が、カナダ政府を代表しながら、応援してきましたが、カナダとしても、これ以上は、応援できない。

 

6:ダグラス・ジョンストン博士のこと

 

ダグラス・ジョンストン博士は、いろいろな問題に、ちょっと距離をおいたカナダ的な学者ですが、そういう意味では非常に日本人に近い人です。彼もカナダのビクトリア大学を定年で終わりまして、私に、日本とカナダの関係は大切だし、海洋問題で協力もできるだろうから、日本で何かアルバイトだったらしたいから知らせてくれと、このあいだ行ったときに言われましたけれども、何か機会がございましたら、彼に一度話をさせるといいかと思います。

 

7:国連海洋法条約を沿岸国のために生かす

 

全体の流れとしましては、SEAPOLは海洋法会議が始まったころに結成されまして、海洋法会議に「SEAPOL、South East Asiaの声を効果的に注入しよう」という発想からスタートしております。したがって、立法過程の中にSEAPOLは直接間接に影響を与えております。例の経済水域それから漁業圏の問題、それから内陸国の漁業権、沿岸国の管轄権の中における内陸国の取り扱い、そういうことなどはこのSEAPOLの動きが反映していると彼等も自認しているところがあります。

海洋法条約というのは、今までのところは、沿岸国が権利を貪ってきました。その結果としてものすごい無駄が出ている。その実態はSEAPOLに行くと全部暴露されます。例えばタイの水産大臣が出てきて、「タイで取っている魚の三割強は腐ってしまう」と言うんです。なぜ腐るかというと、「冷凍施設がない。氷も足りない。」それで、大きなカニが、ざるに入れられたまま炎天下の道ばたに一日中置かれていて、夕方買って食べると腹をこわす。

結局、海洋法条約の漁業に関する規定は、今までのところ経済的ではないんです。無駄が非常に多い。最近のプロジェクトを見ますと、ようやく今、そういう無駄を省いて相互に協力しあおうとしております。そのために何らかの支援のオーガニゼーション、あるいはノウハウを持ち寄り互いに協調しあって、効率的な経済的な措置を取ろうとしています。今やASEANの経済も少しずつ良くなることによって、設備面も充足されていくだろう。そうすると国連海洋法条約が生きてくるであろう。しかし、今までのところは、必ずしもそうではありません。

お配りした資料で、「今後のプロジェクト」というところを見ますと、ご承知のように国連海洋会議は国際機関に徹底的に抵抗しましたね。

 

 

 

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