それでは、「国際運河とマラッカ海峡とがどう違うのか」という疑問が湧きます。国際運河は人工的です。小さな細い海峡と非常に似ている運河です。もう一方のマラッカ海峡は自然の海峡です。その広い海峡をなぜ規制するかというと、事故が起こらないようにするためです。素人としては、そのためにはそれなりの予防措置が必要ではないかと考えられるわけです。これについては、ひょっとしたらアメリカあたりの圧力があるかも知れません。規制を許すと軍艦に対する規制もおのずから許されますので、そのへんでは、アメリカの圧力が強いのではなかろうか。それは皆さんのほうがご存じかも知れません。
マラッカ海峡がまだまだ危険ならば早目に手を打った方がいいと思います。日本政府が直にお金を出すのがまずければ、いろいろなやりかたがあると思います。財団の民間を通じて、安全を期すことが大事かなと思っております。SEAPOLの会議からは、こういう空気が非常に伝わってきます。彼らは、万一の大事故を大変に心配しており、会議の場からは、純粋な彼等の意志が伝わってきます。
SEAPOLはAPECとも結びつきましたし、APECも前回からSEAPOLの出席をオブザーバーとして許可しております。APECも、自分たちだけでは力不足なことを承知しておりますので、協力をしてくれということです。そのAPECには、安全保障分野まで入りますから、扱う分野は、まず海の全面にわたっていますが、多少は陸にもあがってきつつあります。したがって、SEAPOLを通じて、アジア外交とアジアとの関係においてはほとんど全面的に深いコンタクトがとれることになります。
4:SEAPOLジェネラル・セクレタリのフランシス・ライ博士のこと
SEAPOLのフランシス・ライさんが、ここに来られて講演されたこともあります。あの人はそんなふうに見えないんですけれども、実はアジアで一番人脈の広い女性だと思います。センスがいいし、それから非常に政治的能力がありまして、何も準備しなくても大きな大会を取り仕切る能力を持っています。書かせると、内容のあるものを書きます。
この人は東大時代に衛藤審吉さんのもとで日本の政治を研究されたんですね。それから香港大学、またアメリカのハワイ大学でPhDを取られました。その頃はあちこちからお呼びがかかって、いろいろな役職にも着かれました。香港の嶺南大学では学部長もされました。それからサンフランシスコに行って、現在は教授の籍をカリフォルニアにおいたまま、出向の形でSEAPOLのジェネラル・セクレタリ(事務局長)をしておられるわけです。非常に信頼できる方です。非常に有能です。電話一本で、世界の隅々から人集めをしてくれる方でございます。
中央大学に一昨年の秋の一学期、客員教授としてお呼びしたことがあります。そして去年から今年にかけまして、中央大学で中国政治の専任教授に欠員が出たものですから、私が推薦しまして、東京に連れてきたいと思ったのですが、惜しいところで日本語が十分でないということでだめになりました。日本語は相当できるんですけれども、もっとできる人がいて採用されませんでした。ご本人は、今はとにかく、タイに残ってSEAPOLを直接助けるよりは、他の国から応援したほうが本当の応援になるのではないかということを言っております。