10:協同組合が抱える問題
もう一つ、協同組合は協同組合で、農民のためにできたものだけれど、ここまで来て、組織が非常に大きくなったでしょう。その組織として維持していかなければならない。これまた個々の農家が生きていく話と無関係ではないけれど、別ですね。僕は最近ある農業関係の懸賞論文の審査委員をやっているんですが、若い人が、農協は手数料ばかり高くてメリットがないといいます。それよりも直接スーパーに持っていった方がはるかに手取りがいいし、やり甲斐もある。農協が潰れたらいいとは思ってないんですが、そういう角度からの問題もある。
同じ問題は漁協にもあります。漁協もいまWTOでこの間も問題になったんですが、漁業と林業の非自由化があって、それは何のためにあるのかよくわからない。ニシンなんてもう日本では捕れないのに、国内のニシン漁を護るためにニシンの輸入割当がある。そしてその割当を漁協がもらっているわけですね。そういう既得権みたいなものを維持していかなければ、漁協の経営が成り立たないという問題がある。これはまた、生産者と協同組合の組織とのギャップですね。ですから現実レベルにおいて、なかなか僕たちが言うようにはなりにくい。そういう新しい人たちを巣立ててやろうかという動きは、通産省のベンチャービジネスの補助金という形をとっています。ところが、農政に協力的でないという理由で、若い経営者に補助金を出すことを妨害します。おそらく日本全体がいまそうなのかもしれません。考えるはざまに来ているのかもしれませんね。
11:スペインとイギリスの「カレイ戦争」に学ぶ
川村 日本は漁業の先進国で、生産の形態では世界をリードしているわけですね。世界的な傾向としてはこういう形になっていくのでしょうか。まだ新しい海洋法ができたばかりで、自分の国の権利と考えて一所懸命海洋権益を守ろうとしている国が多いし、まだ捕る漁業が結構ありますね。それで国際的な紛争も起こっています。中国の南シナ海から東シナ海に出てきている漁船もそういう問題だと思います。韓国は日本に追随しているとおっしゃいましたが、日本以外はまだまだだということですね。
日本だけが進んだ形になっている中で、むしろ周りの国々が、かつて日本が捕っていた漁場などに進出する。あるいは中国との間にある漁業権の問題もまだ解決していません。まだまだ捕る漁業に周りの国が依存している限りは、やはり摩擦は相当残りそうですね。
唯是 韓国もまだ沖合に入っていますからね。ただ、一応、先ほど申し上げたMSYに基づいていろいろな割当規制ができています。その枠を各国はみな守っているはずなんです。スペインとかイギリスでもカレイ戦争とかありますが、起きるということは、やはり割当量を取り過ぎているのであって、反対側の国から文句が出るわけです。