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水産も同じで、高齢化してきていますが、ほんとうに養殖でも栽培漁業でも主体になってやっていくのはかれらではない、違うわけでしょう。そういうのを一括して、路頭に迷うと困るから、助けなければいけないという議論を非常にエモーショナルに言うから、何だかわからない話になってくるんです。その辺の区別が必要です。雇用を守るための安全保障議論と、環境を守るための安全保障、それと本当の食糧危機に対する安全保障、そういういろいろなディメンションがあって、それぞれに応じた安全保障を議論していいと思うんです。

 

9:生産量は減っても、日本・韓国・台湾の生産額は減らない

 

川村 先生、2ページの「図1、3 漁業部門別生産量、生産額(累積)の推移」ですが、生産量は減ってきていますが、生産額はあまり減らないですね。この傾向というのは、日本だけの傾向だけでしょうか。韓国とか中国とか、周りの国はどうでしょう。将来的にこういう傾向になるんでしょうか。

唯是 中国は知りませんが、韓国は同じ傾向です。台湾も同じだと思います。今のような技術水準であれば、ますますそうなっていくんじゃないですかね。

川村 中国はまだ取る漁業が当分続くんでしょうね。

唯是 でも、内水面の養殖はずいぶん一所懸命やっていますね。

川村 漁業に参加する人数構成について、農業はかつて三ちゃん農業と言われましたが、漁業もまったく同じようなものですか。

唯是 同じですね。でも三ちゃん農業でさえないわけです。完全に高齢化して、ある意味では選別されてきて、本格的にやろうという人たちが農業では出てきているんです。水産の方がどうなのか僕もよく知らないんですが、だけど似たような条件に追い込まれていると思います。ただ農業と非常に違う所は、水産には一方に大変な大企業があるわけです。大洋漁業とかニチロとか。農業の大きなものとは全く桁違いですね。彼らは水産はもう駄目だからみんな陸に上がったわけです。それで畜産をはじめたり、もっと商業部門を拡大して輸入して売るとか、そういうふうに展開していますね。だからいま漁業をやろうという人たちは、そういうところではなくて、もうちょっと中堅どころに移って、今いったように非常に大きな新しい技術が入ってくれば、思い切って投資してやってもいい。地方自治体なんか、かなりその地域の海に興味を持ってやっていますね。そういうところからだんだん新しい動きが出てくるんでしょう。農業でも、そういう機械を入れたような技術をやっている人たちというのは、非常に若い人が増えています。だから、だんだん世代交代して新しい芽が出てきていると思います。ただ、政治としては、そうである人もない人も平等に考えなければいけないので、どうしても話は混乱してくる。それはやむを得ないと思いますが。新しい芽が出てきていることは確かだと思います。

 

 

 

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