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そこで、ある日フッと思い付いて、塩田に小型の水車を取り付けた。ただグルグル回していれば塩田に空気が入ります。それに気が付いて、作業が非常に楽になったといっていました。いまはウナギなど、他の養殖でも見かける風景は車エビで開発されたようです。それは昭和30年の初めだったと思いますが、今では東南アジア、その他でもエビの養殖をやっているようです。

話が横に逸れましたが、養殖というのは孵化させて増やしていくという方法にだんだん傾斜していますが、やはり餌の問題で苦しんでいます。餌でもっと困るのは、餌が生きていないと食べないものですから、例えばヘリコプターで上から餌を落とすと、スッーと落ちていく餌は食べます。ところが、いったん落ちてしまった餌は食べない。そうすると、それらが累積して腐敗しますから、一種の公害問題になります。日本近海で養殖をやっているところは、そういう意味ですごく汚染した状態になっています。そのへんも養殖を今後どうしたらいいかという問題になります。

本格的なリサイクリング・システムはむしろ「栽培漁業」で採用されています。これは農業や畜産に近い漁業です。「栽培漁業」というより「海洋牧場」といった方がイメージが湧くかもしれません。稚魚を孵化して放流する一方で、海の環境を整える。古い船を沈めたり、ブロックを沈めたりして、魚の住みやすい漁礁を作ってやる。規則的に餌を補給してやる。こうやって、一種の放牧みたいな形で、広い海でそれをやって行けば資源が維持され、増産されていくのではないかということが期待されます。

しかし、魚種によっては困難がともないます。マグロのような回遊性の魚を栽培漁業でやるのは大変です。世界中を相手にしなければならない。マグロはエラ呼吸ができない。ですから、ものすごい勢いで海を突っ走ることによって海水がエラに入って、それで酸素を取っています。止まったら死んでしまいます。日本の高度経済成長みたいなものです。とにかく走り回っている。そういう漁種をある一定のところに制約して栽培するというのは、困難な問題です。それでもマグロの養殖は始まっています。

また、別の問題もあります。タラとかカレイとかの底魚は、特定の漁場の中だけではなく、隣の漁場へ移動します。千葉のある漁協で貝の稚魚を放して、大漁を期待したのですが、移動して隣の漁協へいってしまった。隣の漁協は何もしないのに豊漁で、放流した漁協は何も捕れなかったという話があります。これが隣国同志の了解や200海里専管水域になると、国際問題に発展します。

 

5:ハイテクの応用

 

水産業が直面している壁を破るためには、農業同様、ハイテクを応用することが考えられます。アルビン・トフラーの『第3の波』では21世紀に期待される技術はエレクトロニクス、バイオテクノロジー、海洋開発、宇宙開発ということになっています。

音波などで魚群を掴まえて根こそぎ捕ってしまうという話がありますが、逆にいえば、これから人工衛星で魚群を捕り過ぎないように管理していくというエレクトロニクスや宇宙開発の使い方もあると思います。

 

 

 

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