だから増えない。捕ってやるということは、必ずしも直ちに減るということにはならないのです。捕獲はむしろ資源を増殖していくことになります。ただ、漁獲には限界があって、ある水準までは捕ってやらないと増えませんが、それ以上捕ると逆に減っていくという限界があります。これをマクシマム・サステイナブル・イールド(MSY:最大維持生産量)と呼びまして、この概念を中心にしてFAOなどが水産資源の捕獲許容量を計算しています。
もっとも、海のものとも山のものともつかない、その海のものですから、なかなか推定は難しいと思います。FAOでは、だいたい1億トンが限界であろうと考えています。現在世界の漁獲量は約8000万トンぐらいですから、もう上限は見えてきているということになります。FAOの見通しでは、需要の方はこのままいったら1億3000万トンぐらいまで増加するのではないかとみています。そうすると、水産の当面の資源問題は将来予想される5000万トンの不足をどうするかという問題になります。
ところが、ご存知のように、この資源問題には200海里問題が絡んできますし、これがさらに国境の線引き問題にも発展してきます。したがって、水産には食糧全体の需給問題からくる圧力に加えて、水産資源のMSY限界説があり、その壁を突破する技術的ブレイクスルーの他に、地政学的問題までが含まれることになります。
食料というのはだいたい、冒頭に私が申し上げましたように、栄養バランスが良ければいいのであって、何を食べなければいけない、ということはありません。大豆がいいとか、玄米がいいとか、いわれますが、それはそれで間違いではないのですが、これは一種の信仰みたいなもので、どんなにいい食料てあっても食べ過ぎると良くありません。常にある一定の栄養バランスを取ることが必要です。
例えば、たんぱく質を焼くと、それが肝臓を通してDNAに影響し、ガンを引き起こすという話があります。特に焼き鳥は危険だといいます。ところが、それにタレを付けたり、あるいは野菜をはさんで食べると、発ガンの危険性が回避できると言われます。要するに、「食生活の多様化」です。食生活はむしろ多様化した方が、いろいろな食料を食べ、いろいろな問題に対処できるので、栄養的にも望ましい。「食生活の多様化」は人間に楽しみを与えながら、同時に栄養バランスを無意識のうちに保ってくれます。できるだけいろいろな種類の食料を取った方がいいことになります。
動物性食料、とくに畜産物を食べ過ぎると身体に悪いという議論がありますが、動物タンパク自体は悪いものだと私は思いません。組織からいっても、植物より動物の方が人間に近いわけですから、動物性食料を食べると早く吸収されて組織形成に役立ちます。植物タンパクをとって人間の体のタンパクにするよりは、動物の方が効率的です。動物性食料それ自体は決して悪い食品ではなく、むしろ健康食品といえるでしょう。非常に疲労したときなどは、肉を食べた方が回復が早いとよく言われます。ただ、問題は動物性脂肪がそれに付随して多く採られますのでよろしくないということでしょう。低脂肪高蛋白の魚介類が好まれるのもこの理由からであろうと思われます。