22:何兆円かかかる話:京都会議と「軽油硫黄分0.005重量%」
小川 ちょっと違う質問ですが、京都会議の結果、2010年までに二酸化炭素の排出量をどうするかが問題になっています。先ほどのご説明だと、ヨーロッパは15ページに表がありますが、アジアの現状はどんな感じですか。
曽我 まずヨーロッパのことをお話しますが、この表はたまたま1997年9月に調査に行ったときにいただいたものなんですけれども、これは何のためのスタディなのか。実は、ガソリンと軽油の品質をどのようにいいものにしていくかというスタディを彼らはやっているんです。
今の日本と欧州とアメリカの軽油の品質ですが、硫黄分は0.05重量%です。これを、2005年からは10の1の0.005重量%に下げましょうということをヨーロッパでは決定したんです。
それを実現するためには何兆円もお金がかかる。それを合理的にやっていくためにはどうしようか。それで、彼らはスタディを始めたんです。その根っこのひとつは、CO2対策のためには、ディーゼルエンジンを使うことがより効率が高いではないかということです。しかし、ディーゼルエンジンの効率を上げていくと公害対策が必要で、触媒をつけなければいけない。ところが、硫黄分が触媒を駄目にしてしまうので、硫黄分を落とさなければいけない。これを「リファイナリーサイドで対応しろ」と政治的に決めたんです。これに対して製油所側は反論しまして、「トータルで考えるべきだ」、「精油所で対応すると、製油所ではエネルギーコストがかかってCO2がたくさん出る」、「それよりは、自動車側でどこまで対応できるのか、どこまで効率を上げてCO2を減らすことができるのかも考えるべきだ」と主張しまして、トータルでいいところを狙うべきでないかというスタディが欧州15ヶ国で始まった。わたしが出張したときはその作業をやっていたんです。
それに対して、例えば韓国はどうかというと、韓国はその対策のために5000万ウォンしか予算をつけていません。5000万ウォン(500万円)で何ができるのかと聞いたら、韓国人は「いや、日本がいま一所懸命JCAPというのでやっている。その結果をもらえばいいから、われわれは何もやらない。だから日本は間違えない対応をしてくれよ。同じことをやるからね」ということでした。これが日本と韓国の環境対策のせいぜいのところです。ちょうどアジア通貨危機もあって、そんな状況の中ではそういうことでした。
23:シーレーンに対する物理的障害:潜在的な妨害者
山本 ちょっと別の次元で、枠組みの話に戻りますが、軍事的には、石油を輸送するシーレーンに対する物理的障害が問題になるとすると、相手として考えなければならないのは中国だけなんです。なぜかというと、中国以外の国々は自由圏の一員として、シーレーンに物理的障害が発生すると自分たちも影響を受ける。だから、トラブルは起こしたくない。