それはどういうことかと言いますと、少数のグループ、かつてのメジャー、欧米のアングロサクソン系の石油会社が世界の石油市場をコントロールしていたのが1960年代から70年代、それからOPECが石油をコントロールする時代に入ってきたわけですけれども、それが1980年代半ば以降は、石油の需給とか価格のコントロールが非常に難しくなってきた。そういう意味で、通常の一次産品のようなコモディティ的な性格が非常に強くなってきているというのが現在の特徴です。
それを示しますのがこの1枚目のグラフです。原油価格もいまやアメリカのNYMEXなどの先物市場に上場され、そこで値段が決まるような時代になってきている。そういう意味で非常に大きな変化が起きています。
ただそうは言っても、昨年から今年の初めにかけてのように、中東原油が一時は10ドルを切るほど暴落しますと、OPECを含めて産油国も非常に経済的に困りますから、そこでまとまって減産をして値段を上げるということで、いままた20ドルを超えるところで、非常に短期間で激しい値動きを示している。こういうことですから、完全にほかの一次産品と同じようにマーケットで決まっているということではなく、少数のOPECを中心に中東の産油国、あるいはベネズエラとかメキシコなどの国がそれなりの意志を持って減産したりすれば、マーケットは大きく変わる。ただ、長期にわたってそういうことができるかというと、これは市場とのバランスからいって難しい時代になってきていて、為替と同じように短期間で非常に変動するような商品になっている、というのがひとつの特徴であります。
それを示しましたのが1枚目の下の図でございまして、世界に占める生産のウェイトから言いましても(旧ソ連は特殊で除いていますけれども)、非OPECとOPECの比率では、1980年代半ば以降、非OPECのウェイトが非常に高くなってきて、それだけ市場へのOPECの影響力が低下してきているということの反映であります。これが石油の基本的な性格をめぐって「戦略物資論」と「コモディティ論」の二つがあって、この間を大きく揺れ動いている。最近は、どちらかというとエネルギーの世界の自由化、規制緩和で、かつてのような戦略物資だから国がコントロールするというようなものの考え方から、できるだけマーケットで効率を高めるようにしたほうがいい、という考え方に移ってきています。
石油産業もそうですし、電力とかガスを含めて、規制緩和、自由化が進んでいるという背景のそういう構造変化がある。また、それが完全にマーケットだけでいいかというと、これはまた非常に問題で、いまは振れ過ぎている感じがあるんですけれども、そういう二面性があるというのがひとつの特徴です。
2:世界の石油貿易のフロー
そういうことを大前提にしまして、2枚目にありますのは、イギリスのBP AMOCOという会社が毎年出している統計で、世界の石油の貿易フローを示したものです。下に数字がありますが、世界の石油の貿易量が原油と製油に分けて書いてあります。1998年で見ますと、原油については輸出入がだいたい16億トン、製油が4億トンで、合わせてだいたい20億トンぐらいのものが貿易取引されているということであります。