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(研究の概要−新たな海上防衛力の役割としてのOPK−)

「海洋安定化」に貢献する活動としては、海洋資源の利用権や島嶼の領有権を巡る国家間の懸案が武力紛争にエスカレートすることを予防するための活動として、例えば、地域あるいは国家間における取極の遵守情況のモニタリング等、また、シーレーンの安全確保のための活動として、例えば、航路帯あるいは港湾における海賊やテロ行為への警察的対処、もっと範囲を広げるならば、信頼醸成のための諸活動や、大規模災害発生時における救助活動や麻薬等の密輸取締、さらには難民対処なども含まれるであろう。また、資源・エネルギー需要の急増や人口・食糧問題、さらには開発に伴う環境破壊等が安全保障上の問題として取り上げられるようになっている情況において、海洋資源・環境の保護に貢献するような活動もまた重要となってくるであろう。

このような活動は、国連海洋法条約に基づく諸々の「海洋管理」レジームと密接に関連し、また、同条約に規定される国家管轄水域を横断して実施する必要性もあるところから、多国間で協調し、一定の国際ルールに従って実施すべき局面を考慮しなければならない。

本研究作業では、そのような「海洋安定化」のための活動を、“Ocean Peace Keeping”、OPKと呼称している。OPKは、「海洋安定化」のための海上防衛活動の総称である。

OPKに参加する海上防衛部隊は、それぞれの派出国の国内法に沿って行動することになる。従って、自国の主権の及ぶ領域以外においては、特定の地域的取極めとそれを履行し得る国内法が整っていない限り、自衛として認められる権限を越えた武力の行使は困難であり、現状、その行動は非軍事的な分野あるいは武力を行使しない範囲に留められるであろう。

本プロジェクトは、OPKの具体的な一例として、海上防衛力による海洋資源・環境の保護のための共同活動を提示している。これは、地域的取極等に基づいて派出された艦船あるいは航空機が、各国の国家管轄水域を横断し、資源・環境に関する取極の遵守情況をモニタリングするものである。各国の艦艇等が実質的に所謂プレゼンスするところから、海賊やテロ行為の未然防止ともなり、また具体的な信頼醸成措置ともなるであろう。

 

(どのような研究プロジェクトが考えられるか)

防衛研究所での研究は、安全保障戦略、海軍戦略、海洋法、国際法、国際関係論、国連の活動、資源・環境等のグローバル・イシュー等、幅広い研究が必要なところから、プロジェクト・チームを組み、学識経験者からのヒアリングなどを行ないながら進められた。同様の研究をしている、カナダのダルハウジー大学、ハワイのE−Wセンター、海洋問題世界委員会(IWCO)、および国際海洋学界(IOI)とも連携を取りつつ実施されている。ただし、IWCOは98年の国連総会への提言をもって解散された。

 

プロジェクト員

防衛研究所 秋元一峰主任研究官(1等海佐)…全般、企画、安全保障担当

横浜市立大学国際文化学部 布施勉教授…国際海洋法、海洋の総合管理担当

 

 

 

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