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テレビを見ていたら核実験をやったが、そこから放射能は出ていないといっていました。それはいいとして、震動によって、そうとう広い範囲で泡がたった。あれは明らかに海洋環境にエネルギーを持ち込んだことになるから、まさに典型的な海洋法条約第1条の定義に該当し、海洋汚染にあたる。そのことをよく知っているから、フランスは絶対に批准しないとそこまで頑張って、実験が終わってから批准した。それに対して抗議声明を出そうということで、横浜市議会も抗議声明を出しました。横浜市長が「あれは国際法違反なのか」というから、「明かに違反です、あれは海洋汚染になります」と言いました。横浜市議会はフランス政府に対して抗議して、その後何年間か、横浜でやっているフランス映画祭を、追い出しました。でもフランス映画祭は、やりたくてしょうがないんですが。

 

37:排他的経済水域を宣言することで生じる義務

 

それから排他的経済水域も同様なことが言えます。排他的経済水域は、国家の領域ではありません。排他的経済水域に対して国家の持つ権利は主権ではありません。主権的権利です。主権的権利というのは、排他的管轄権ということもでき、そこにある資源、経済的な権益を排他的に利用する権利です。だからその水域がその国のものだという領土概念では全然ないんです。ということは、逆に見ればわかりますように、排他的経済水域というのは、経済的利用権が排他的に沿岸国に与えられるということですから、排他的経済水域のエコシステムを管理して行く沿岸国の義務も大きくなる。

初めてそこに気づいて、現在国際社会でどうなっているかと言ったら、多くの開発途上国が排他的経済水域を設定したけれど、管理能力がないから、管理能力がない分だけ、先進国に援助しろという。勝手にそれを設定しておいて、管理能力について、技術的・資金的な援助を先進国がすべきだという要求をするんです。「それなら宣言するな」ということですね。宣言しなくてもいいんですから。

大陸棚の場合は宣言に関係なく、自動的に200カイリまでの大陸棚には沿岸国の主権的権利が認められて、それから先に大陸棚が存在する場合は、360カイリまで自動的にその国の主権的権利が認められる。

しかし、排他的経済水域の場合は、みずから宣言することによってのみ設定することができるわけで、それは自由意思に基づきます。援助を要請するということは管理が出来ないんだから、それなら「もともとやるな」と言うべきなんです。わが国も排他的経済水域を大々的に設定しているわけですから、あの排他的経済水域を人類に対する義務の履行として管理するシステムを作っていかなければいけないわけです。

 

38:海のPKOから海軍の平和的利用と人類への貢献がはじまる

 

この点に関連して、海のPKO (Peace Keeping Operations)をわれわれは推進していかなければいけないと思っています。つまり海軍の平和利用という課題はそこから始まるのです。いままでの単なる正面装備で、憲章51条による自衛権の行使だけではなくて、海洋法条約の枠組みの中から、人類のためにどうやって、海の専門家である海軍が貢献して行くのかという新しい仕事が出てくるわけです。イギリスなどでは、将来的な傾向としてイギリス海軍の今後の年間経費の半分は自衛権の行使に関連するもの、あと半分は人類のためのオーシャン・ガバナンスに向けて行こうとしているわけです。

 

 

 

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