5:IOIの政策決定の実務を知り得る立場からのお話し
世界でIOIの登録メンバーは約5,000人おりまして、非常に影響力がありますが、理事会のメンバーは全部で15人ぐらいで、執行理事会の中心メンバーは5人です。これは選挙になっているのですが、どういうわけかある時、私の名前がノミネートされました。当選して、現在1期目ですが、IOIの企画協議会の議長として、IOIのナンバー3になっています。ということで、いろいろな政策決定の実務を知り得る立場にありまして、そういう意味で現在の海洋法をお話ししてみたいと思います。
6:日本の官庁で一番進んでいるのは防衛庁
いままでもありとあらゆるところに呼ばれて話をしていますが、あまりにもいまの世界の状況に日本は疎くなってしまっているので、私の話を聴いても、嘘だろう、と言われて信じてもらえません。しかしこのような状況になって、何年か前から防衛研究所と共同研究をやるようになり、数年前からはこの問題に関して秋元一峰さんといろいろ話すうちに、それは重要な問題だから積極的にやるべきだという結論になり、研究を進めてきました。従って、官庁関係でいちばん理解が進んでいるのは防衛庁、ということになると思います。私はなぜかと思ったのですが、特に海軍というか海上自衛隊の実務についておられる方は、形の上での理解ではなく、現実的な問題に非常に興味を持っておられる、頭が柔軟だということがあると思います。
7:アメリカ政府は冷たいが、海軍は熱心
私が知っている外国の人たちでも、海軍担当者というのは、いちばん柔軟で、オーシャン・ガバナンスという新しい海洋の思想に関しては、多くの人が実体的に参加しています。IOI Canadaというのがあって、私と同じような立場でカナダからの代表が来ていますが、この人はカナダのコーストガードの中佐で、本格的にカナダでやられている方がIOIの代表となって来ているということです。そういうわけで、海軍当局というのは、非常に柔軟に対応しているということが言えます。
アメリカについてもまったく同じで、政治レベルではほとんど対応できておりませんが、いろいろなところで、アメリカ海軍が参加していて、それなりに新しい海洋秩序の展開に関して興味を持っており、研究もいちばん進んでいると思います。アメリカ政府そのものは、学会も含めて、国連海洋法条約にいろいろな事情があって参加しなかったので、世界で唯一のはぐれ国家ですから、海洋問題については、アメリカではいまのところ見るべき事情は何もないと思います。だからアメリカに行って海洋法を研究しようと思っても何もないということは明確です。したがって、海洋法関係の国際的な学会などにアメリカ人の学者が来て、イニシアチブをとるということも現在のところほとんどありません。本格的な研究はヨーロッパにありまして、海洋問題、特に海軍の問題にからんでは、NATO諸国がいちばん研究が進んでいて、積極的だと思います。
8:学術会議も、海洋問題をどうしたらいいかさっぱりわからない
さて今日は細かい国際海洋法の話をすることが目的ではなく、イメージというか思想的な点がどうなっているかということについて、今後の研究のスタートになるようなことを話してくださいと秋元さんに言われているので、あとのディスカッションも含めて、海洋法が構造的にどうなっているのかということをお話ししたいと思います。