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その中で、いまのようなやり方では駄目だ、という意見で一致して、1972年に国際海洋法学会「海の平和学会(Peace in Marinus)」を結成したわけです。その学会をコーディネートするためのシンクタンクとして、同じく1972年にIOI (International Ocean Institute)を、アービド・パルドーの故郷のマルタに創設し、現在に至っています。

 

2:国連NGOの国際海洋法学会(IOI)設立(1972年)

 

現在IOIは、国連NGOになっておりまして、海洋問題、特に海洋の法政策的な意味での問題追求をする唯一の世界NGOで、他に同様なNGOがないということもあって、国際連合が行なう海洋問題の下調べその他の基本的枠組づくりは、ほとんど僕らがやっているといってもいいと思います。

 

3:Agenda21の第17章:海洋の政策的枠組み基本文書(1992年)

 

ですからこれから申し上げる、海洋に関する政策的枠組の基本的文書の一つである、1992年につくられた「Agenda21」のPart17は、ほとんど僕らが作って、ちょっとした修正はありますが、そのまま国際的合意になって、「Agenda21」の17章となっています。IOIは現在でも非常に盛んに活動しておりまして、6月の初めには定例理事会がマルタ共和国の本部でありました。

 

4:日本政府の無関心

 

IOIには世界に14の支部があり、その支部の一つがIOI−Japanという形で、私の勤めている横浜市立大学がホスト・インスティテュートになって、私の研究室にあります。これは世界では最も小さいオペレーションセンターですが、他の国ではほとんど政府がらみの大きなシステムになっています。こういうことに対してわが国の政府はほとんど関心を示しませんから、横浜市のご助力で、小さなセンターがあるというわけです。中国などは、国を挙げてセンターを誘致しており、国家海洋局がそれを取り入れて、国家海洋局の一部がIOIオフィスになっております。したがって、IOIがどのような政策を出していくのかは注目しなければなりません。

わが国では国家間の話し合いには注目しますが、それ以前のさまざまな根回しについてはほとんど興味を示しません。実際にはできてしまったものを、やむを得ない、世界の動きだそうだ、といって受け入れるだけです。例えば海洋政策について、どうつくっていくのかというところの関心度はほとんどゼロだといっていいと思います。そういう意味ではわが国が海洋問題に関して影響を与えるとか、方向性を与えるということについてはお寒い限りで、IOIに関する限り唯一私がそれに参加しているだけだと思います。

 

 

 

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