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あのときが一種の境目だったと思いますが、日本のコンテナの港がみんな競争力を失ってしまったんです。前から失いかけていたけれど、神戸港が動かなくなったことによって、日本の港を使わなくてもいいじゃないか、ということになった。四国地方とか九州とか日本海の裏側から釜山にコンテナを持っていって、そこから遠距離の太平洋航路とか欧州航路とかに積み替えるという現象が目立って出てきた。かつては逆で、日本が基幹航路の荷物の集積地だったわけです。だから韓国から日本に小さな船でコンテナを持ってきて、日本から積み込んで運ぶ。中国からもそういうことをやっていたのが、どうも日本が場末の港になり始めた。

これは先の大震災だけの話だけではなく、その前からいろいろな原因がありました。だいたい日本の港の荷役料がものすごく高いんです。だいたい韓国等の倍以上はするでしょう。しかも夜働かない。朝8時から4時で、1時間昼休みで、夜間荷役はやらないんです。世界の常識は日本の非常識で、日本の常識が世界の非常識なんですが、だいたいヨーロッパ諸国もアメリカも、お金は高いけれど、ラウンド・ザ・クロックで、24時間ちゃんとやっているんです。日本の港は日曜日もやらないんです。それでも日本の力があって、しかも日本の港がちゃんと動いているときには、土日を釜山に寄せて、月曜日に日本に持ってくるという芸当もやったけれど、いよいよ日本の港も見放され始めたということで、運輸省でもあわてているところがあるようです。

現実にそれでどういうデメリットがあるかというと、やはり三日ぐらい損してしまう。例えばアメリカへ行く貨物は一旦釜山に停まっていくわけですから、三日ぐらい損するし、当然コストもかかるということが大きく、さあ大変だというので何とかしようと思っていますが、何しろ港湾荷役を取り仕切っているのはみんなヤクザですから(爆笑)。これがウンと言わない。月夜の夜ばかりでない、と言われてしまう。

もう一つは、日本の港があまり早く立派な港を造り過ぎたものですから、あとでコンテナ船がものすごく大きくなって、日本でやり始めたころは2,000個積みぐらいの船のときに港の整備が一応済んだのですが、いま5,000個とか6,000個とかというコンテナ船になりますと、ドラフトが足りないんです。15メートルぐらいのドラフトが要るんですが、15メートルの港はほとんどないんです。いま一所懸命、港の水深を深めるかというようなこともやろうとしていますが、それによってどれだけ回復できるかわからない。そういう問題がいろいろあります。(「そういうことをちゃんとやっている研究機関はあるんでしょうか?」) データベースを持っているところはたくさんあります。どれぐらい荷物が動いているとか、そういうことはわりと克明に調べているところもある。もう一つは海運のマーケットですが、こういう変動をトレースしているところもあります。しかし、こういう問題そのものを総合的にアプローチしているというか、研究しているところは、残念ながらあまりないのではないでしょうか。

 

 

 

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