その記憶が薄れる暇もない1999年の10月に今度は日本人の船長と機関長と後はフィリピンの船員が乗り組んだ「アランドラ・レインボウ号」と言う船が海賊に襲撃され、救命筏ごと船外に遺棄された船員達は奇跡的にタイの漁船に救助されると言う事故も起こっています。他にも似たような激しい海賊行為が行なわれています。
昔は、そういう場合は世界の海軍が常時パトロールしていて取り締まることになっていたんですが、この頃の海軍はあまりやらないようです。海軍のある国には海運はないし、海運のある国は海軍がないとかいう(笑い)。どうするのか。船員を武装させるとか、それとも乗り込んできても入れないように、ものすごいドアにして、一種の城壁というかフォートレスにしてしまうとか、そういう議論もあるようです。
やはり船がいかれたらみんなも損するわけです。荷主も損するし、船会社も損するし、保険会社も損するから、そういうところから金を集めて、海賊から防衛するとか、いろいろなアイデアが出ているようです。昔は海賊から海運を防衛するために海軍ができていたような気がするんですが、今はそんなことをやる気はどこの国にも全然ないようです。そういうことがいま問題になっています。
4:わが国海運の潜在的問題点
4.1:経済的安全保障上の弱点の表面化・傭兵的船員集団で緊急事態に備えうるか?
最後は日本の場合ですが、フィリピン人船員を乗せるというのは、いうなれば中世のヨーロッパ諸国みたいなもので、ほとんど傭兵で船を動かしているわけです。日本の船会社はそうしているんですね。だから日本の海運会社は残っているけれど、しかもそれは便宜置籍船ですから、船は日本籍でないような船が動いている。もちろん2〜3人船にキーマンとしての船員は乗っていることがありますが、そのうちそれもいなくなってしまえば、たしかに経営の主体は日本人ですが、そこに乗っているのはみんな傭兵集団だということになる。それが、一旦緊急事態になったときに、まともに機能するのか。いったいどれだけ自由になる海運を持っていれば、最低限の国民生活、国民経済が維持できるのかというような議論が、冷戦末期にはまだ少しありましたが、いまはまったくそれがなくなっているんです。本当にそのような事態が起こったらどうなるのだろうかという問題があるかと思います。
4.2:日本港湾の競争力喪失、日本港湾のFeeder Port化
もう一つ、いままさに運輸省あたりで問題になっているのは、神戸の大震災が起きました。