日本財団 図書館


この間のナホトカ号はトータルで230億円ぐらいの保証金を支払うことになっています。プリストブラスコ社と言うロシアの船主が負担したのは2億6500万円に過ぎません。これは国際条約で決まっているんです。船はここまでということが。今は条約の狭間でそういう変な現象が起きていまして、あるレベルまでしか船会社の責任は問わない。そこから上は、原油というへんなものを運んでいるから、例えば鉄鉱石を運搬している船が沈んでも、何の損害も起きない。海洋汚染は起きないですよね。ところが原油というものを運んでいるから事故が起きるんだというので、石油会社が面倒をみることになっているんです。

これは国際油濁保障基金(IOPC: Internatinal Oil Pollution Compensation Fund)というシステムがあって、事故が起こったら、原油の輸入量に応じて石油会社が負担する。国別に分けるんですが、最終的には石油会社や電力会社が負担する。ところが、それに一つ大問題があるのは、アメリカが、船の責任を問わないようなシステムとか、責任に限界を設けるようなシステムは受け入れられないということで、条約ができ上がりかけていたのに加入していないんです。結局アメリカは、自分で勝手に厳しく船会社の責任を問うという法律を作ってしまったんです。作っても、いくら船会社の責任をとってみても潰れてしまったら誰も保障できないから、やはりそういうグローバルな網を被せて、保障したり清掃、クリーンアップをしたりするしかないんです。ただ、なにしろアメリカが加入していないものですから、日本の負担がものすごく重い。だいたい、アメリカが抜けると日本は輸入量がダントツでトップですから、29%ぐらい負担しないといけない。この間のナホトカ号の事故の場合も、日本は29%位負担したんです。日本の石油会社はワシントンに怒っているんですね(笑い)。本国が被害を受けて、なおかつ何でこんなものを負担しなければならないのかという、常識的にいえば大変な矛盾です。そういうものを負担させられている。しかもナホトカ号は日本の港に寄るわけでもないですから、先ほどのポート・ステイト・コントロールが効かないわけです。ただ日本海の真ん中の公海を航行していただけですから、これも効かないということです。

 

3.3:東南アジア、極東方面での海賊行為の凶暴化

 

それから今しきりと問題になっているのは海賊ですね。海賊がマラッカ海峡とかあの辺で目立ってきている。機関銃を持ってスピードボートでやってきて船に乗り込んで物を盗ったり、この間は船をまるまる盗られてしまった。天佑丸と言う船がいなくなったので、あちこち調べていたら、それらしい船が中国にあるのが見つかりました。船名は変えてあったけれどエンジンのナンバーとかから天佑丸であることが確認されました。荷物が全部なくなっており、乗組員は全員行方不明です。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION