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20:「インタラクションのなかでビジョンが生まれてくる」

 

加藤 例えば漁業と外交に関する問題で考えてみますと、何か紛争が起こったときや、あるいは将来の方向性なりビジョンを作っておいた方がいいということになったときに、具体的な提言をする。その際に、どういう機関やどういう人たちを組み合わせて、どういうことを研究すればいい、ということまで提言できるようなものでなければならないということですか。

山内 そういうことです。それはものすごくスポンタニアスで、フレキシブルで、自発的な動きだと思うんです。

よく言われるように「ビジョンを出す」というよりも、「インタラクションのなかでビジョンが生まれてくる」ことになるだろうと思います。

ですから旗を立てることも大事で、たとえば『鷹は群れず』という旗を立ることは重要ですが、そういう基本理念は基本理念としておきまして、現実の世界が抱える問題はフレキシブルですし、それぞれの領域ごとに変わっていくことを忘れてはならないと思います。

どんな問題に直面しても全部インハウスで答えるなんてことは、研究員が3000人いても不可能です。ですから、これからのあるべき研究所の姿としては、独自の研究をして、自分のコアコンピータンス(強み)を固めると同時に、そういうプラットフォームの運営ができることが肝心です。そういう能力が政策決定支援に直結すると思います。

加藤 プラットフォームを構築したりマネージする人材とはどういう人を想定していますか。

山内 小川さんみたいな人ですね(爆笑)。要するに、この問題については誰がどこにいるかということを、その領域ごとによく知っている人です。そしてうまずたゆまず折衝を行なう人ですね。

加藤 海の問題は広いですから、いろいろとつながった分野でそういう機能を果たしていくことは意味がありそうだけれど、できるんでしょうか。

山内 私は、それは意味があることだが、現状では欠けている能力だと思います。従来は日本の中央官庁が、ある意味ではそういう情報の収集機関になっていて、業界の人と飲んだり話したりしながら情報を集めていたんです。だから、そこに情報が集まっていました。でも、そういう従来型のコミュニケーションだけではなかなかタイムリーに必要な知識が入ってこなくなっているのではないかと思います。産業領域自体がどんどん変わっていきますからね。従来使っていたネットワークというのは、むしろ新しい政策を作る際の障害要因になりつつありますね。

 

 

 

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