その中で、さまざまな漁業交渉が行なわれました。講和条約と表裏一体の形で北太平洋条約というのがあったと申しましたが、1956年には非常に激しくやりあいました日ソ漁業条約交渉があったように、漁業条約交渉は日本外交の優先的な課題であったわけです。日本が海洋国である以上、考えて見れば、それは当然かも知れません。先般も韓国との間に非常に激しい漁業交渉が行なわれ、幸いなことに両国はこの問題をうまくまとめたようですが、外交的な側面から見た日本の海洋問題も面白い課題であると思います。(拍手)それでは、みなさまからのご質問にお答えしたいと思います。
質疑応答セッションのポイントは次の通りです
11:日本の縦割り体制
12:East-West Centerのバレンシア博士
13:ピーター・ハースの「認識共同体」
14:役所が便利な学者を一本釣り
15:優れたNGOは中立性を保つのがうまい
16:ナホトカ号事故と「船の車検」
17:かつては、ロイズが「駄目」といえば、とても船は動かせなかった
18:誰が研究しているかということも知る人ぞ知る
19:決定過程支援プラットフォームをシンクタンクが作ること
20:「インタラクションのなかでビジョンが生まれてくる」
21:実際に存在するプラットフォームの事例:KJ Shuttle
22:完全に行き詰まった従来のビジョン型行政
23:「暗黙知」「形式知」「共有化」「内面化」のサイクル
24:「イベント・ドリブン」ではなく恒常的なプラットフォームをつくる
11:日本の縦割り体制
秋元 ありがとうございました。いまお話をうかがいました環境問題には、日本の海洋担当官庁の縦割り体制が表れていると思います。
先ほど山内先生から出た地中海の委員会においても、環境だけでなく、安全保障には非常に重要な位置付けが与えられています。日本は、海洋開発は環境庁とか気象庁に任せきりで、外交や安全保障の面から環境を見ていくという視点が強調されていませんね。とくに、日本の海洋環境情勢が資源開発にどんな影響を与えていくのかという側面は、まったく議論されていません。そういうことをもっと啓蒙していく必要があります。環境と資源開発と平和の問題は、グルッと循環しますからね。
山内 実際には、海洋法問題についても、また、長く激しく続いた漁業交渉においても、外務省の漁業室と農林水産省が極めて有効な連携をとって進めておりました。それに大日本水産会などの漁業者の団体がバックアップするという良いシステムができていたのです。ただ、それは一種のスペシャリストによってマネージされていたために、その活動は外部には、なかなか知られていなかった。