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海に関しては、「湾岸」「沿岸」「遠洋」という距離的区分によって三つにわけていて、継続的にモニタリングが行なわれてる。5 しかし残念なことに、担当省庁がばらばらにモニタリングを行なっていて、その結果、総合的な把握をしようとしても、いろいろとわからないことが多い。そこで、これを打破するために省庁間調整がさけばれ、また、「海洋環境モニタリング・ネットワーク構想」がもとめられているわけです。縦割の壁をなんとか乗り越えられないかという要請があがっているのです。

国内の省庁間の縦割問題とは別に、国際的な調整がもとめられる問題もあります。たとえば、PCBや有機塩素系農薬は、地球的な大循環によって、世界中を汚染する。たとえば東南アジアで散布したDDTが北極に蓄積して、北極の海洋哺乳動物に高濃縮されていることから、国際的な調整がもとめられています。

酸性雨についても地球的な大循環でとらえる必要があるのですが、モニタリングが縦割であったり、観測点が不足していたりで、なかなかうまくいきません。酸性雨の調査では、現在日本海岸の酸性雨の30〜40%が中国起源だと言われていますが、それについては、なかなか納得の行く結果が出ないのです。その理由のひとつには、アジアで使っているシミュレーションモデルが、ヨーロッパで開発されたシミュレーション手法を改良したものだからということがあります。北東アジアは、ヨーロッパと違い中間地帯に海洋があります。

その海洋上で定点観測ができないというのが、いまアジアではネックになっているのです。シミュレーションでは、定点調査を行ない、その結果をコンピュータに入力するわけですが、実際、酸性雨が偏西風によって飛ばされてくる際に、一番大きなファクターは降雨ですが、海洋上では降雨を定点観測していないので、不正確な推定しか行うことができないのです。その結果、シミュレーションによっては、酸性雨の中国起源は「10%以下」と出たり、「40%」と出るなど、ばらばらです。これでは話しがさきに進みません。従って、海上で定点調査を行なうことの意義は大きいと思います。

こういったことも、酸性雨を観測するグループと、環境庁の海洋モニタリンググループとが話し合って初めてわかった問題点なのです。6 話しあってみるまでは、どこに問題があるのかもわからず、「10%以下」や「40%」という結果だけが一人歩きしていた。これが、現状の取り組みに関する私の感想です。

 

5 たとえば、人工放射性核種について言えば、核実験や原子力施設の周辺の放排水等は科学技術庁、原子力事故や廃棄物投棄は海上保安庁と農水省が行なっている。石油油脂は、環境庁、海上保安庁、気象庁が主たるアクターである。

6 コンピュータで酸性雨のシミュレーションをやっている人が、「シミュレーションの精度を上げたくても海上のスポットがないんだよ」と言った時に、「それだったら自分たちはいま海上のモニタリング・ネットワーク構想をやっているから、ここでなんとかできないか考えられるね」という、打てば響くような答えが返ってくる、そういう仲間を集めることが、いま一番求められている。

 

 

 

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