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その後、例えば、海賊が中国の港にいることが明らかなのに、わざわざ見逃したり釈放したりしたことがあります。一昨年は、テンユウ号が乗員ごと行方不明となり、船体が中国で発見された。アンナシェラー事件では、乗っ取られた船が中国で発見されている。何か中国の国家自体が海賊の問題を利用しているというか、そういう見方もできるんじゃないかと思うんですが。

 

64:中国では、人間が利用できる国土は半分

 

平松 人間があり余っているということです。中国のことを考える時に、中国という国は面積が世界第三位の国でありますけれども、人間が利用できる国土は半分なんです。国土の半分は使えない。どういうところかというと、これは言わなくてもわかると思いますけれど、砂漠と山ですね。その山も、日本の山なんてものじゃない。世界にないような山がたくさんあるわけです。今日の産経に私が書いたチベットだって人間が住めるところではない。

じつはさっきも隣の大内先生と話していたんですが、「アメリカと中国とは似ているところがあるね」ということで意見が一致したんです。要するに漢民族というのは四千年、五千年の歴史があると言われているわけですが、しかも世界中にチャイナタウンがあって、どこへ行っても驚くほど中国人がいる。「こんなところにいるのか」というようなところにまでいますね。にもかかわらず、自分の領土だと言っているチベットと新疆には住めなかったんです。そこにはついに同化できなかったんです。

日本とアメリカの違いということで、ちょっと大内先生と話したんですが、要するに日本人はどうもそこに住んでいる人間よりは土地を大事にする。日本の国土を離れて出ていった人間に対しては全く無関心である。一方、アメリカ人は出ていった人間を一所懸命保護しようとするし、そういうことをやってると、その土地までがアメリカになっちゃう傾向がある。中国にもそういう傾向がある。要するに同化したところが中国である。結局、中国の歴史を見ていけば、周辺の地域から始めて、だんだんそれが広がっていく。だんだん同化が進んでいくということで広がっていくわけです。

 

65:中国には国境線という概念がない

 

話が飛びますが、中国には国境線という概念がないんです。あるのは辺境なんです。辺境というのはディストリクトあるいはエリアなんです。エリアであってどこからどこまでが中国の辺境かというと、これは、まったくもって皆目わからない。その時の力によってずっと延びていくところが中国の領域である。私は学生には「風船玉みたいなもので力があったら膨らんでいき、力がなかったらしぼんでいく」と言っておりますが、広がっていくといつのまにかそこが中国になっちゃうということです。そういう意識で考えればいいと思うんです。

 

 

 

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