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フランスも作ろうとしてできなかった。イギリスもできなかった。結局アメリカの専売特許なんです。カタパルト自体はローテクなんですが、非常に複雑なシステムで、これはもう何年も何年もかかって仕上げたノウハウの塊みたいなものです。開発に時間が必要で、自前でやるには相当時間がかかる。

ただし、ソ連のクズネツォフのような航空母艦ならもっとはやく造れるでしょう。クズネツォフでは、現在のスホイなんかの飛行機を甲板の最後端におきまして、そこでエンジンを全開にしてブレーキを放す。要するに自力であがっていくタイプの航空母艦です。しかし、船の端からエンジンをふかして自力で発艦するタイプですと、甲板の長さが300メートルは要るんです。そうしますと、原子力エンジンを乗せるかどうかわかりませんが、船の大きさが5万トンをちょっと越えるぐらいの大きさになります。こういう航空母艦の弱点は、連続して航空機を発艦させられないことです。戦力発揮のスピードが米国の空母とは全然違います。米国の空母には全然たちうちできない。

在来型の飛行機を洋上で発着艦させることなら2015年ぐらいにはやろうと思えばできるでしょう。ただ、カタパルト式空母になるとさらに10年ぐらいかかるでしょう。ただし、その大きさの船では、せいぜい50〜60機しか乗りません。

 

63:1990年代の海賊問題

 

小川 それでは、みなさん、3時に研究委員会が始まってからすでに6時間近くたってますのでだいぶお疲れのようですが、このままお別れするわけにもいきません。

つぎに、委員長のほうからトピックスの選択をお願いします。まずは海賊でございましょうか。

川村 海賊の問題は、今日の平松先生の講義では、時間もなくて、触れていただけなかったんですけれども、やはり公海の自由にとって一番深刻な問題です。中国が相当絡んでいることは、いろいろな情報からわかっています。中国が国家意志をもって関連しているのではないかということも証拠として上がってきています。それについて先生のご意見を伺いたいと思います。

例えば1991年から93年にかけて、中国の軍服を着た連中が東シナ海で中国の軍艦に乗って走り回り、銃を撃ったりして、船を止めて、いろいろなものを奪った事件がありました。あの時は、海上保安庁からも抗議がなされた。あれを機会にホットラインもできた。しかし、海賊の活動がパタッと止まったのは、ロシアがミサイル巡洋艦を出してからです。1993年の春以降、パタッと止まった。海賊も自分達が沈められては商売になりませんから、引っ込んでしまった。海上保安庁がいくら中国当局と交渉してもなかなかやまなかったのに、ロシアが軍艦を出したら引っ込んでしまった。

中国政府が取り締まらない理由ですが、「これは地方政府の仕業であるから、中央政府がコントロールできないんだ」という解釈や、「中国政府はわざわざああいうことをやらせて、あの地域への影響力を広げたいから放ってあるんだ」という見方もあったわけです。

 

 

 

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