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53:訓練改革や演習で金がかかる軍隊になってしまった中国軍

 

笹島 3月18日の台湾総統選挙投票日はいかがですか。

平松 今度の3月だって、やらないですよ。だって、中国は、李登輝のあとを考えればいいんですから。李登輝がいなくなるのは確実なんですから。李登輝のあとがどうなるかということをよく見極めてやればいい。今度も威嚇はすると思いますよ。台湾が独立すると困りますからね。まあ、戦争することはないけれども、威嚇はして、「とにかく独立はだめよ」という。独立しなければいいわけですから、当面は。そういうことだと思うんですね。

あれだけの規模の演習をやれば、軍事費が増えていくというのはもう当然です。これまでは、数を減らしていくという方向でしたから軍事費はずっと減ってきているんです。1980年代の中頃まではずっと下がっていって横這いになった。それが1989年頃からあがり始めた。量から質への転換が着実に進んでおり、訓練改革とか演習によって金がかかる軍隊になっています。

毛沢東の人民戦争には金がかからないが、近代的な軍隊では、人間にも金がかかる。全体として金がかかる。これを即「軍拡」ととることはできない。要するに量から質への転換過程にあるということだろうと思います。私はだいたいそんなふうに思います。

 

54:日中関係の半世紀

 

加藤 「ミリタリーの会話、交流が何を生むか」という質問がありましたね。

平間 信頼醸成が何をもたらすかということです。

平松 日中関係を非常に大雑把かつ乱暴に話すと、50年の歴史があるわけですが、最初の20年間はアメリカの封じ込めの時代ですね。日本はその一員であった。台湾もそうです。したがって、中国としてはその封じ込めを突破することが最大の目的であった。具体的には日米安保反対、それから米軍基地撤去です。もうひとつ密接に関係してきたことは、「中国を代表するのが台湾、中華民国である」という考え方をつぶすことでした。中国は、20年間にわたり、何かといえば「日米安保反対、二つの中国反対、台湾との関係を断て」とやってきた。

それが突如、それこそコペルニクス的な180度の大転換をとげるのが1974年前後です。国連加盟、そしてニクソン訪中、そして日中正常化、日中国交が出てくる。その時に片づいたのは、台湾と中華人民共和国の問題です。「どっちの中国が中国か」という問題にけりが付いた。

そこで、もうひとつ言っておきたいことは日米安保です。あれほど「日米安保反対」と言っていたのに、日米安保についてはもう何も言わなくなった。沈黙した。沈黙しただけなんですが、つまり「あってもいい、反対はしないよ」ということです。あくまでもそれは、「あってもいい、反対はしないよ」ということであって、別に「日米安保は認めますよ」と言ったのではないわけですが、それによって、日本の体制側の人はかなり喜んで、「日米安保を認めた」と過剰な反応にまでいってしまう。これがそもそもの間違いのもとになってくるわけですが、そういう時代が来た。

 

 

 

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