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51:1990年代の戦略・作戦研究と訓練改革

 

1990年代に江沢民がやったことは何か。自分の権力をまず固めたあとでやったことは訓練改革です。統合作戦を念頭においた訓練改革がはじまった。同時に戦略戦術の研究、作戦研究があって、これは中国では「戦法研究」と言っていますけれども、戦争の方法ですね。要するに戦略、作戦の研究をやるという方向で訓練改革が行なわれていって、それを検証する。同時に兵器は大したことはないけれども、着実に新しい兵器が出てくる。兵器性能の検証、訓練の検証のために、かなり大規模な軍事練習が各地でどんどん行なわれていく。これがだいたい1990年代の前半です。

いろいろな作戦目標をもって訓練をやるわけですが、中国という国は幸か不幸か、ああいうどでかい国で、しかも隣接国がたくさんある。しかも、国家がまだ安定していない。社会も安定していない。そういう意味で、ありとあらゆる事態に備えなければならない。上は核兵器から下は非常に低レベルの通常戦略まで備えて、国内治安向けから国境でのちょっとした小競り合いまで対処できる軍事力が必要だと考えている。そういう意味では、なかなか大変な国だと思いますけれども、とにかくそれをなんとかして作ろうとしてやっている。それぞれの部署においてそれぞれの対象をもって演習がずっと行なわれている。

 

52:「よほどのことがない限り中国は台湾を攻めない」

 

中国が、東シナ海とか台湾正面でかなり大規模な演習をやり、台湾が「これは攻めてくるのではないか」と騒ぎ始めたのは1994、5年です。『九五年閏八月』という本が出たのはそういう背景からです。台湾は、ある意味で当然ですけれども「中国でやる演習はすべて自分のところに攻めてくるというものだ」と宣伝する。とんでもないはずれたところでやっている演習も、「すべて台湾に攻めてくるための演習である」と宣伝する。その宣伝に、日本のマスコミも乗せられて騒いだというのが、この間の1996年の李登輝の選挙の時の騒ぎです。

中国軍は、もちろん台湾に攻めていくということを前提として、演習をやり訓練をしています。でも、まだまだとてもそんなことはできない。つまり統合部隊は建前でして、これを一所懸命早くやらないとだめよということで、総参謀が命令を出して一所懸命やっているところです。能力がないのに台湾に攻めてくるなんていうことは考えていない。これはずっと見ればわかるわけです。

私は「よほどのことがない限り中国は台湾を攻めない」と言ったんだけれども、マスコミは全然聞いてくれなかった。あの時は、マスコミは「戦争が起こる」という前提で取材してくるわけですから、「戦争なんて起きませんよ」といくら理由を説明したって聞いてくれないわけです。

 

 

 

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