2:21世紀の「海のシンクタンク」はネットワーク型で
加藤 若輩なのに主催団体の代表ということで早々とご指名いただきました。先ほど午後6時に終了しました第6回研究委員会の折りに、理事長の椎名素夫に代わりまして皆さんにお礼を申し上げましたので、その分はここでは割愛させていただいてよろしいでしょうか(異議無し)。それでは、事務局長の趣旨に沿ってお話をしたいと思います。
まず、その前にひとこと御礼申し上げます。先ほどまでの公式「第6回研究委員会」会合は日本財団がスポンサーされましたが、ただいまからの「うみのシンポジウム」の席は、岡崎研究所岡崎久彦大使のホストで、ご厚意で設営していただき、大変ありがとうございます。(拍手)
3年間の「公海の自由航行」のプロジェクトについて総括すべきではありますが、私自身は実は通産省を退官して国際経済政策調査会に入ってからちょうど2年ですので、最初の一年は出ていません。
日本財団からは、「原則として3年以上同じプロジェクトを続けて支援しない」というようなことを伺っておりました。そこで、この3年目は特にとりまとめの年にするのがよいと思いまして、そのようにさせていただきました。
わたしが参加してからの過去2年のあいだのことですが、川村委員長を始めいろいろな方から、「非常に広いひろがりをもつ海の問題が、縦割りでしか扱われていないのが日本の現状だ。海洋国家として、これは改めなければ駄目だ」ということをたびたび伺いました。
オーストラリアやカナダ、あるいは東南アジアの多くの国にも、総合的な海洋問題研究所があります。たとえばマレーシアのMIMAは立派な研究所ですし、タイのSEAPOLの活動はアジア中に鳴り響いています。これらのシンクタンクは、国際法、環境、海運、安全保障など、海に関わるさまざまな問題に対応している。「日本にも、これに対応する横断的な海の研究機関が絶対に必要だ」ということを繰り返し伺いました。
そこで、いろいろ考えたのですが、このプロジェクトの3年目は最後の年になるわけですから、総合的な海洋研究所を日本に設立することにつながるような研究と調査をやろうということになりました。
こうして、これまでよりも幅を広げて、海に関わるいろいろな分野の勉強をしました。今日は、第6回研究委員会が開かれましたが、平松茂雄先生をおむかえいたしまして、そのお話が、たまたま岡崎研究所のお家芸の安全保障のほうにぐっと収束しましたので、フィナーレとしてはふさわしかったわけですが、これまで1年間に、エネルギー、法律論、資源の問題、海賊の問題など、いろいろなことを議論していただきました。こうした結果が全て日本財団のホームページにも掲載され、多くの方に知っていただけるよう事務局の方で取り計らっていただけるということは欣快にたえません。
特に前回の第5回研究委員会は、本日もご出席いただいている大内和臣中央大学教授のお話を伺いましたが、その時はたまたま日本財団の方から広渡英治海洋船舶部長はじめ三人の方が参加されました。その時に広渡部長のほうから、先ほど岡崎大使がおっしゃられたように、日本財団も海を広く扱わなければいけないということで「海のシンクタンク」の設立を考えているところだというお話がありました。3
3 この冊子の大内和臣教授の講義録参照。とくに第26節参照。