平易な話し言葉で報告する
この事業の第一眼目は、うみに関する知識の啓蒙と普及とにありますので、できるだけ多くの読者に読んでいただけるよう心がけました。そして、苦痛を感じることなく知識がスーッと頭にはいるように、この報告書はできるかぎり、平易な話し言葉で書かれるべきであると思いました。話し言葉にすることが、必ずしも議論のレベルを下げるものでないことは、この報告書をご一読いただければおわかりいただけると確信します。とても複雑な問題であっても、明晰で平明な話し言葉で語れば、誰もが理解できるのです。
日本人はもっと海洋民族にならないといけない
平松茂雄先生は、シンポジウムで、日本は37万平方キロの陸地を国土としているが、実はその11倍の面積の海洋を支配しており、世界有数の面積をもつ海洋国家であるが、このことは案外海上自衛隊の人でも知らないようだ、日本人はもっと海洋民族にならないといけないと言われましたが、まったくその通りです。
海洋は人類の共通の財産であり、人類の持続的発展のために賢明な使い方がなされねばなりません。世界には200近い国家がありますが、その中には自国民の福祉すら自前ではできない国が多くあります。国連海洋法条約は、発展途上国・沿岸国の数の論理で沿岸国家の権利を大幅に拡張しました。それが200カイリ排他的経済水域なのですが、その結果、かつてはほとんどが公の海であった世界の海の半分が、いまや「誰かの海」になってしまいました。これを海洋の分割化と言いますが、世界の多くの国に大変な権利が付与されたのであります。しかし、権利には義務もともないます。自国の国土と同じぐらいの海洋が突然に200カイリ排他的経済水域として与えられた多くの国は、責任を十分に果たせずにいます。多発する海賊問題への対処、麻薬パトロール、環境汚染、通過する船舶への安全の提供や海難救助、さらには、有事の際の機雷掃海となると、多くの国はお手上げです。世界の多くの国の無責任を責める前に、日本は国土の11倍という広大な海洋を、日本のため、地域のため、世界のために活用する努力をすべきです。それが、日本が海洋国家として目覚めるということではないかと思うのです。
2004年の国連海洋法条約のレビューにそなえる
残念な事に、世界の多くの国がいまだに権利の拡大に汲々としています。2004年には国連海洋法条約のレビューの時期がまいりますが、わたくしたちは、国連海洋法条約の成立の経緯を知り、よく理論武装しておかなければなりません。