5-2 ポリウレタンアンカー方式の装着実験
本装着実験は、ポリウレタンアンカーのアンカー力の確認と、今後本方式の装着方式の実用性を確認するための諸試験装置等の設計用データを得ることを目的として実施した。4-3-2(1)に述べたように、2液を選択しアンカー力確認の実験を行ったが、その結果は、最大43kgfのアンカー力を記録し、満足すべきものであった。
さらに、実際の鯨肉によるポリウレタンアンカー方式のアンカー力確認試験を、来年度以降に実施することとしている。
5-2-1 実験装置の概要
(1) 実験装置の設計の考え方
各構成要素は次のような考え方で設計した。
1) 小型高圧炭酸ガスボンベ:鯨の肉内部でポリウレタンを皮下注射のように注入するためには、鯨肉の内圧以上の圧力でポリウレタンを押し出さなければならない。そのために高圧な炭酸ガスを発生するボンベを使用した。ピストンまでの配管長さおよびピストン押し出し時のストローク容積の圧力損失を考慮し、供給ボンベ容量をCO2ボンベの初期圧力60kgf/cm2の10ml、20ml、50mlのサイズを用意した。ボンベのネジ頭部に焼入れ綱ニードルをねじ込み、穴を空け、開封する。
2) O(オー)リングシール材:ポリウレタンの原料である変性ポリイソシアネートや洗浄剤の塩化メチレンに対して腐食性の無い材料として全てPTFE材を使用した。
3) ピストン内径&シリンダ容積:必要となる2液の量と鯨肉内圧を0.5MPaと仮定し、必要圧力を考慮してシリンダ容積(最大20ml)と内径φ20を決定した。
4) 2液同時吐出バルブ:耐圧性能と開閉の容易さを考慮し、ボールバルブを使用した。2つのバルブを同時に開閉するために、2つのバルブハンドルを棒で連結し、連動するように配置した。シール材はグラスファイバー入りのPTFE材を使用した。
5) 銛先端:今回は、ポリウレタンの発泡状態の観察と引抜き力の測定を主な目的としたため、刺し込み時の抵抗力は無視し、引抜きの方向性をなくすため、円錐形状のものを使用した。ノズルの円筒径をφ12、テーパ最小径φ9、円錐底面径をφ14とした。
6) 衝突混合ノズル部:溶剤洗浄を要する部品を少なくするため、混合ブロックは角度40度の2配管が交差し、ノズル内のみで混合するように、衝突混合を行なうブロックと先端ノズル部を取り外せる構造とした。また、取り外した後、直ぐに引抜き試験用の治具を取付けられるような構成とした。図4-3-6参照