(3) トド
さらに馬場(1997)は、1993年6月14日に北海道の猿仏地方浜鬼別沿岸の定置網で混獲され、約5ヶ月間小樽水族館で飼育されたトドの若齢の雌にPTT(東洋通信機(株)製;#5167 & #17974)を頭部および背部に装着し、同年11月25日、捕獲地までトラックで輸送し、放流した。
PTTは2つとも位置観測用のもので、その大きさは#5167(モデルT-2050)が円盤形、直径8cm、高さ3cm、空中重量約140g、電池寿命120日(タイマーなし)、#17974(モデルT-2038)は円筒型、直径7cm、長さ19cm、空中重量約500g、電池寿命約1年(1日発信、3日休止)である。
トドへの装着は2液混合エポキシ樹脂(コニシ(株);クイック5)を用いて行った。装着所要時間は両機合わせて27分であった。
放流後の受信状況は、#5167の電波は全く受信されず、#17974の電波は1993年11月25日から1994年1月16日までの52日間受信することができた。この間の受信回数は41回で、そのうち23回は受信のみ、18回は位置が計算された。1日の受信回数は最高4回であった。
(4) アザラシ
他方、M.M.Sisak(1998)はハワイモンクアザラシに陸上動物用に開発された汎用のGPSシステムを適用して行動追跡実験を行った。
ハワイモンクアザラシはハワイリーウォード諸島の北西部に分布し、時にハワイ諸島主部の周辺とジョンストン島で見られる。非回遊性種と考えられており、海上での生息域と行動はほとんど分かっていない。絶滅危惧種に指定されており、1980年代の推定総個体数は約1500頭とみられている。
陸上動物用のGPSシステムには情報処理と電源管理、通信、制御機能が組み込まれている。回収されるデータは位置、日付、時間、センサー情報(水温、塩分等)である。ユニットのサイズは装着対象となる動物の大きさ合わせて軽量小型化されているので電源の規格に制限を受けることが多い。一般的にはリチウム電池パックが利用されている。電源の寿命を延ばすために、GPS位置決めが可能な時間(約40秒)はスイッチオンとなり、終了後は直ちにオフとなるよう設計されている。また、動物の種類によって行動パターンが様々なので調査目的に合わせてGPS位置決めのスケジュールの修正を行う必要が生じる。これについては、GPS HOST(Letok Engineering社)のような市販ソフトを、コマンドユニットインタフェイスを用いてシステムオペレーションに関するパラメータ管理を、コンピュータ直結もしくは無線によるリンクでラップトップコンピュータ上で行うことにより対応することができる。なおGPS HOSTは回収データのダウンロードや電源状態、他の診断プログラム的情報を得ることが可能である。